退職金控除を2回目も受けるときの計算

退職金控除を2回目も受けるときの計算方法

2回目以降に退職金を受け取る場合、前回の退職から一定の期間が経過しているかによって、税金の計算が変わります。退職所得控除(退職金にかかる税金を安くする仕組み)をどのように適用するか、計算のルールを整理しました。

  • 前回の退職から5年(共済組合等は20年)経過しているかを確認する
  • 勤続年数の数え方に注意が必要
  • 計算式は退職金額から控除額を引く形になる

最終更新: / 出典: 厚生労働省

退職金控除を2回目も受けるときの計算方法と具体例

2回目の退職金では、一定の場合に限り、前回と今回で重複する勤続期間に対応する控除額を差し引きます。
前回の退職手当等が対象期間外で、勤続期間を通算する場合にも該当しなければ、原則として控除額の調整は不要です。

計算の基礎となる退職給付額の平均は、以下の通りです。
これらは、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者を対象とした調査結果に基づいています。

  • 大学・大学院卒(管理・事務・技術職)・定年の場合:18,960,000円
  • 高校卒(管理・事務・技術職)・定年の場合:16,820,000円

上記の数値は、一時金と年金現価額の合計額を示しています。

参考:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

2回目の計算では、一定の場合に、前回と今回で重複する勤続期間に対応する控除額を今回の退職所得控除額から差し引きます。
差し引いた後の金額が、今回の退職所得の計算に用いられます。

具体的な計算手順は、前回の退職時期や勤続年数によって異なります。
退職手当等の種類と支払年に応じ、前年以前4年内、9年内または19年内などの対象期間を確認してください。

前回の退職手当等が対象期間内の場合、前回と今回で重複する勤続期間に対応する控除額を調整します。
ただし、前回の退職時に控除を使い切っていない場合など、例外的な処理もあります。

計算を正確に行うためには、前回の退職所得の源泉徴収票を手元に用意しましょう。
前回の勤続期間や適用された控除額が、今回の計算の根拠となるためです。

もし計算方法に不安がある場合は、管轄の税務署へ相談することをおすすめします。
会社から交付される退職所得の源泉徴収票の内容についても、あわせて確認してください。

また、今回の退職金の支払者には、対象となる前回の退職情報を申告する必要があります。
その際は、「退職所得の受給に関する申告書」に前回の源泉徴収票を添付して支払者へ提出します。

退職金の受け取り方が一時金ではなく年金形式の場合、計算の仕組みが変わります。
受取方法によって税金の計算ルールが異なるため、事前の確認が重要です。

退職所得控除の調整には、前回の退職手当等が「前年以前4年内」などに支払われたかという区分があります。
この期間の判定により、差し引くべき金額の計算ルールが変化します。

計算ミスを防ぐためにも、前回の退職時の「勤続年数」と「控除額」を正確に把握しましょう。
これらが、2回目の退職所得を算出する際の重要な判断材料となります。

計算式に含まれる言葉の意味

退職所得の計算には、いくつかの言葉が登場します。それぞれの言葉が何を指しているのかを整理しましょう。

退職金の受取形態による違い

退職金の平均額は、退職の理由や職種によって異なります。以下の表は、調査結果に基づく平均額の例です。

退職給付額の平均(勤続20年以上かつ45歳以上)
職種・学歴 退職理由 平均額
大学・大学院卒(管理・事務・技術職) 会社都合 17,380,000円
大学・大学院卒(管理・事務・技術職) 自己都合 14,410,000円
大学・大学院卒(管理・事務・技術職) 早期優遇 22,660,000円
高校卒(管理・事務・技術職) 会社都合 13,850,000円
高校卒(管理・事務・技術職) 自己都合 12,800,000円
高校卒(管理・事務・技術職) 早期優遇 24,320,000円
高校卒(現業職) 定年 11,830,000円
高校卒(現業職) 会社都合 7,370,000円
高校卒(現業職) 自己都合 9,210,000円
高校卒(現業職) 早期優遇 21,460,000円

(もとにした一次情報:令和5年就労条件総合調査 結果の概況、確認日:2026-08-23)

表からわかるように、退職の理由や職種によって、受け取る金額の目安は大きく変わります。

退職所得の計算に関わる要素

計算式で使われる「退職所得」とは、退職手当等の収入金額から退職所得控除額などを反映して計算した所得を指します。企業年金を年金として受け取る場合は、原則として退職所得ではなく公的年金等に係る雑所得として扱われます。

また、計算の過程で「退職所得控除」という仕組みが使われます。これは、勤続年数などに応じて、税金がかからない金額を差し引くためのものです。

2回目の退職時でも、対象期間や勤続期間の重複など所定の条件に該当する場合に控除額を調整します。ただし、前回の退職から一定の期間が経過している場合など、条件により計算方法が異なります。

退職金の額は、勤務先の制度によっても左右されます。退職金制度がある企業の割合は、従業員数によっても変動する傾向があります。

従業員規模別の退職給付制度がある企業の割合
企業の規模 制度がある企業の割合
1,000人以上 90.1%
300〜999人 88.8%
100〜299人 84.7%
30〜99人 70.1%

(もとにした一次情報:令和5年就労条件総合調査 結果の概況、確認日:2026-08-23)

退職金は法律で定められた義務ではありません。そのため、具体的な支給条件は各企業の就業規則や退職金規程を確認する必要があります。

参考:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

退職金制度がある企業の割合と金額が変わる条件

退職金が支払われるかどうかは、勤務先の制度によって決まります。退職金は法律で支払いが義務付けられたものではありません。

就業規則や退職金規程(退職金のルールを定めた文書)の定めに従って、会社が支払う仕組みになっています。

厚生労働省の調査によると、退職給付制度(一時金や年金などの制度)を導入している企業の割合は以下の通りです。

参考:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

  • 退職給付制度がある企業の割合:74.9%
  • 従業員1,000人以上の企業における退職給付制度がある割合:90.1%

企業の規模が大きくなるほど、制度を導入している割合が高まる傾向が見られます。ただし、中小企業でも制度を設けているケースはあります。

従業員数別の導入割合を見ると、30〜99人の企業では70.1%、100〜299人の企業では84.7%、300〜999人の企業では88.8%となっています。

退職金の金額は、職種や退職の理由によっても大きく変動します。例えば、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で早期優遇による退職の場合、平均額は22,660,000円です。

一方で、高校卒(現業職)で会社都合により退職する場合の平均額は7,370,000円となります。ただし、これらはあくまで平均値であり、個別の条件で異なります。

支給額を左右する要因には、勤続年数や役職、退職の形態(定年、自己都合、会社都合など)が含まれます。また、一時金として受け取るか、年金形式で受け取るかによっても総額が変わる場合があります。

退職金の詳細な計算ルールは、各企業の規定によって異なります。自身の受給額を正確に把握するには、勤務先の就業規則や退職金規程を事前に確認することが重要です。

規程を確認する際は、退職金の算出根拠となる「基本給」や「退職割増率」などの項目も併せてチェックしておくと、より具体的な予測が立てやすくなります。

ただし、規程の内容は改定される場合があるため注意が必要です。

また、退職金の受け取り方法が「一時金」か「年金」かによって、税金の計算方法や社会保険料への影響も変わります。自身のライフプランに合わせて、どちらの形式が適しているかを検討しましょう。

もし規程の解釈に迷った場合は、社内の人事・労務担当窓口へ相談するか、労働基準監督署などの公的機関へ確認することをおすすめします。

退職金が振り込まれる時期と受け取りの流れ

会社から直接振り込まれる場合

退職金の支払いは、勤務先の規定によって異なります。多くの企業では、退職後に会社から指定の口座へ直接振り込まれる形をとっています。

振り込み時期は、退職日から数か月後になるケースが見られます。就業規則や退職金規程に支払時期の定めがあるため、事前の確認が重要です。ただし、会社の決算時期や事務手続きにより前後する場合もあります。

支払額の目安は、厚生労働省の調査結果が参考になります。例えば、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の定年退職者の場合、退職給付額の平均は 18,960,000円です。

退職理由によっても平均額は変動します。自己都合退職の場合、同条件の定年退職者と比較して、平均額が 14,410,000円 と低くなる傾向が見られます。

また、早期優遇による退職の場合は、平均額が 22,660,000円 と高くなる傾向があります。受給にあたっては、振込口座の変更がないか等も確認しておきましょう。

外部の基金などを通じて受け取る場合

企業が外部の基金に資金を預けている場合は、その基金から支払われることがあります。この場合、会社とは別の窓口から手続きの案内が届くことがあります。

受け取りの手順や時期は、管理している基金のルールに従います。確定給付企業年金(DB)などの制度を利用している場合は、基金独自の申請書類が必要になるケースがあります。

会社から直接支払われる場合とは、手続きの流れが異なる点に注意が必要です。基金から直接受け取る際も、税金の計算に必要な「退職所得の源泉徴収票」が発行されます。

もし、退職金が年金形式で支払われる場合は、一時金とは税金の計算方法が異なります。受給方法の詳細については、加入している基金や会社の担当部署へ確認してください。

退職給付制度がある企業の割合(令和5年)
企業の規模(従業員数) 制度がある割合
30〜99人 70.1%
100〜299人 84.7%
300〜999人 88.8%
1,000人以上 90.1%

(もとにした一次情報:令和5年就労条件総合調査 結果の概況、確認日:2026-08-23)

参考:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

企業の規模が大きくなるほど、退職給付制度を導入している割合が高まる傾向が見られます。制度の有無は、各企業の就業規則等を確認してください。

なお、退職金は法律上の義務ではなく、就業規則や退職金規程の定めに従います。制度の有無や詳細な条件は、必ず自身の勤務先の規定を確認するようにしましょう。

退職金の税金に関するよくある勘違い

2回目の退職金でも、退職所得控除は全額使えますか

必ずしもそうではなく、一定の場合に、前回と今回で重複する勤続期間に対応する控除額を差し引いて計算します。

前回の退職手当等が対象期間外で、勤続期間の通算にも該当しなければ、原則として重複調整の対象になりません。ただし、控除額がそのまま全額使えるわけではありません。

退職金から引かれる住民税は、後から自分で払いますか

いいえ、退職所得の住民税は、原則として退職金の支払時に会社がまとめて徴収します。

支払額からあらかじめ差し引かれるため、自分で納付書を持って窓口へ行く必要はありません。ただし、一部の例外があるため注意が必要です。

退職金が少額なら、税金は一切かかりませんか

いいえ、退職所得控除額を超えた金額には税金がかかります。

控除額を差し引いた後の金額が0円であれば税金はかかりませんが、控除額を上回る退職金を受け取る場合は、その差額に対して所得税や住民税が発生します。

退職金の計算方法について、会社と交渉して税金を安くできますか

いいえ、税金の計算は法律に基づいて行われるため、会社との交渉で税額を変えることはできません。

税額の計算や控除の適用に関する判断は、税法に基づき、管轄の税務署が行います。

退職後の生活や手続きは、現在の立場によって異なります。主なケースごとの窓口や考え方をまとめました。

退職後の状況に応じた主な窓口と対応
立場 制度・状況 主な相談先
正社員 退職後の健康保険や年金の手続き 市区町村の窓口
契約社員 失業保険(基本手当)の受給 ハローワーク
パート・アルバイト 雇用保険の加入期間が短い場合 ハローワーク
休職中の人 在籍したままの社会保険料の支払い 勤務先の担当部署
任意継続を選んだ人 健康保険の継続手続きと保険料 加入している健康保険組合
国民健康保険に入った人 保険料の納付と加入手続き 市区町村の窓口
家族の扶養に入った人 扶養に入るための条件確認 家族の加入している保険組合
産前産後・育児休業の人 社会保険料の免除に関する確認 勤務先の担当部署

(もとにした一次情報:令和5年就労条件総合調査 結果の概況、確認日:2026-08-23)

参考:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

まとめ

2回目の退職金に関するポイントを整理しました。

  • 2回目の退職金では、一定の場合に、前回と今回で重複する勤続期間に対応する控除額を差し引きます。
  • 退職所得控除額を超えた金額には、所得税や住民税がかかります。
  • 退職金の支払額から税金があらかじめ差し引かれるため、原則として自分で納付書を持って窓口へ行く必要はありません。ただし、源泉徴収が不十分な場合は確定申告が必要です。
  • 退職金の受取方法や時期は、勤務先の就業規則や退職金規程を確認してください。

退職金の有無や支給額は、勤務先の制度によって異なります。制度がある企業の割合は、従業員数によっても変動します。

税金の計算方法や具体的な手続きについては、税金の仕組み退職金の解説ページもあわせて参照してください。

手続きの前に、税務署や自治体などの公式な最新情報を確かめる必要があります。

この記事の根拠(本文内30か所・台帳17項目・一次資料1件)

制度の数値(台帳から出しています)

一次資料

数値は一次情報で確かめてから台帳に入れています(情報源について)。リンク先の内容が変わっているのを見つけたら訂正の受付までお知らせください。

この記事の編集責任者

JPSM INTERNET SERVICE 代表

小笠原 治輝おがさわら はるき

休職から退職までの手続きを自分で経験しました。傷病手当金の申請、雇用保険の受給期間延長、健康保険と年金の切り替えを実際に進めた経験があります。記事は、厚生労働省・e-Gov法令検索・ハローワークの一次情報と突き合わせて確認しています。