不当解雇が会社に与えるダメージと解雇のルール

不当解雇によって会社が負うダメージと、解雇の手続き

不当解雇とは、法律や契約に反して行われる解雇のことです。解雇を行う会社は、解雇予告の手続きを正しく行わないと、未払いの賃金や付加金の支払いを命じられることがあります。この記事では、会社が守るべき解雇のルールと、トラブルになった際の手順を解説します。

  • 解雇には原則として30日前の予告が必要です
  • 予告をしない場合は解雇予告手当の支払いが必要です
  • 業務上の負傷などで休業している期間は解雇できません
  • 不当な解雇には付加金の支払いが命じられることがあります

最終更新: / 出典: 厚生労働省

不当解雇でトラブルになったときの流れ

解雇が不当であると感じた場合、解決に向けた手順はいくつかあります。状況によって、会社との話し合いで済む場合もあれば、公的な機関が関わる場合もあります。

一般的な流れは、以下の5つの工程に分けられます。

  1. 解雇の理由と内容を整理する
  2. 会社へ事実確認や説明を求める
  3. 労働局などの公的機関へ相談する
  4. 交渉や紛争解決の手続きを行う
  5. 解決策(復職や金銭解決など)を確定させる

最初の工程では、いつ、どのような理由で解雇を言い渡されたかを記録します。解雇予告通知書などの書面がある場合は、大切に保管してください。

次に、会社に対して解雇の理由を明確に求めます。会社側の説明が、労働基準法などのルールに沿っているかを確認する作業です。

会社との話し合いが難しい場合は、労働局などの公的機関を利用する方法があります。労働局では、会社との間に入って話し合いを助ける「あっせん」という制度が用意されています。

ただし、労働局のあっせんでは、会社側が話し合いに応じない場合もあります。また、労働局の担当者が会社と直接交渉する権限を持っているわけではありません。

もし、会社との交渉において、法的な権利の主張や複雑な争いが必要になった場合は、弁護士へ相談することを検討してください。

弁護士ではない民間の退職代行業者は、会社との交渉や金銭請求を扱えませんが、弁護士や労働組合が運営するサービスは別です(弁護士法第72条)。

解決の形は、元の職場に戻る「復職」だけでなく、解決金を受け取って退職する形もあります。ご自身の希望に合わせて、どのような解決を目指すかを整理しておくことが大切です。

なお、解雇予告手当の未払いに伴う付加金の請求期間は、違反のあった時から 3年以内ですが、当分の間は3年です。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索(デジタル庁)

また、解雇の予告期間についても確認が必要です。原則として 30日前前に予告が必要ですが、予告しない場合は 30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。

ただし、天災事変などで事業継続が不可能な場合や、労働者の責に帰すべき事由による解雇は、予告や手当が不要となる例外があります。ただし、天災事変の場合と労働者の責に帰すべき事由による場合のいずれも、行政官庁の認定が必要です。

さらに、業務上の負傷や疾病による療養期間、およびその後 30日間は、打切補償などの例外を除き、解雇が制限されます。ただし、私傷病による休職の場合は、この制限は適用されません。

試用期間中の場合でも、継続して 14日を超えて使用されているなら、解雇予告の規定が適用されます。試用期間中だからといって、無条件に予告なしの解雇が認められるわけではありません。

解雇のルールを守るための期限

会社が労働者を解雇する場合、労働基準法に基づいた手続きが必要です。解雇の予告に関するルールは、会社が遵守すべき義務といえます。

解雇の予告には、大きく分けて2つの方法があります。一つは、解雇日の30日前前に予告する方法です。もう一つは、予告を行わずに、代わりに手当を支払う方法です。

解雇予告手当の支払いは、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。この手当は、予告を行わずに即時解雇する場合に発生します。

解雇予告に関するルール
方法 内容 条件
解雇の予告 解雇日の30日前前に伝える 原則的な方法
解雇予告手当の支払い 30日分以上支払う 30日前前に予告しない場合

参考:労働基準法 第20条(解雇の予告)|e-Gov法令検索(デジタル庁)

なお、予告と手当を組み合わせ、予告日数に不足する日数分の平均賃金を支払うことも可能です。例えば、解雇日の10日前に予告した場合、不足する20日分の平均賃金を支払えば、その予定日に解雇できます。

ただし、例外として解雇予告が不要になる場合があります。天災事変などで事業の継続が不可能な場合などが該当します。労働者の責に帰すべき事由による解雇も例外となり得ますが、これには行政官庁の認定が必要です。

また、打切補償などの法定例外を除き、解雇が制限される期間もあります。業務上の負傷や疾病で療養するために休業する期間、およびその後の30日間は、解雇してはならないと定められています。

試用期間中の場合でも、注意が必要です。試用期間中の者であっても、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は、解雇予告の規定が適用されます。

もし解雇予告手当が支払われない場合、裁判所が未払金と同額の「付加金」の支払いを命じることもあります。この請求の法定期間は、違反のあった時から3年以内ですが、当分の間は3年です。

ただし、付加金の支払いは裁判所の判断によるもので、自動的に発生するものではありません。不明な点がある場合は、管轄の労働基準監督署へ相談してください。

解雇予告や解雇制限の具体的なルール

解雇のルールには、予告の期間や、解雇が制限される期間が定められています。これらは労働基準法に基づいた決まりです。

解雇予告の手続きには、いくつかの例外や条件があります。ご自身の状況がどのルールに該当するか、事前の確認が要ります。

解雇に関するルールの種類と内容
対象となる状況 ルールの内容 根拠となる規定
解雇の予告 30日前 労働基準法 第20条
解雇の制限(業務上の負傷・疾病) 30日間 労働基準法 第19条
試用期間中の解雇予告 14日を超えて継続雇用されている場合 労働基準法 第21条
付加金の請求期限 3年以内 労働基準法 第114条

(もとにした一次情報と確認日:2026-08-23)

解雇予告のルールについて補足します。30日前前に予告しない場合は、30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。

ただし、予告日数を短縮したい場合は、不足する日数分の平均賃金を支払うことで対応可能です。例えば、10日前の予告であれば、足りない20日分を支払います。

天災事変や、労働者の責に帰すべき事由による解雇などは、予告が不要となる場合があります。ただし、これらを適用するには行政官庁の認定が必要です。

試用期間中の人であっても、14日を超えて働いている場合は、通常の解雇予告の規定が適用されます。

また、解雇制限のルールは、すべての休職者に当てはまるわけではありません。業務上の理由で休んでいる期間や、その後の30日間は、解雇が制限されます。

私傷病(仕事が原因ではない病気やケガ)による休職の場合は、この解雇制限の規定は適用されません。ただし、産前産後の休業についても同様の制限があります。

解雇予告手当の支払いをめぐって裁判になった場合、会社に対して付加金の支払いが命じられることがあります。これは自動的に決まるものではなく、労働者の請求が必要です。

この付加金を請求できる法定期間は、違反があった時から3年以内ですが、当分の間は3年です。期限を過ぎると請求できなくなるため注意してください。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索(デジタル庁)

会社と話し合えないときの相談先

会社との話し合いがうまくいかない場合、外部の窓口を利用する方法があります。
状況によって、相談できる相手や解決の進め方は異なります。

労働条件や解雇のルールについて確認したい場合

解雇の手続きが法律に従っているかを確認したいときは、労働局や労働基準監督署が窓口になります。
労働局は民事上の個別労働紛争について助言・指導を行い、労働基準法違反の疑いは行政指導などの権限を持つ労働基準監督署等が扱います。

ただし、労働基準監督署は、労働基準法などの法令違反があるかどうかを判断する場所です。
個別の解雇が有効かどうかという、民事上の争いを直接解決する権限はありません。

また、ハローワーク(公共職業安定所)は、失業保険の手続きや求職活動の支援を行う場所です。
解雇の不当性を争うための相談窓口とは、役割が異なります。

労働局では、紛争解決の援助を行う「あっせん」という手続きが利用できる場合があります。
これは、第三者が間に入って会社と労働者の間での解決を試みる仕組みです。

あっせんは、裁判のように強制力を持つものではありません。
ただし、話し合いによる早期解決を目指す手段として、一つの選択肢となります。

会社との交渉や金銭的な解決を目指す場合

会社に対して、解雇の無効や未払い賃金の支払いを求める交渉をしたい場合は、専門家への相談が必要です。
交渉の進め方によって、依頼できる相手が分かれます。

弁護士は、会社との交渉や裁判の手続きを行う権限を持っています。
金銭的な解決や、法的な権利の主張を伴う場合は、弁護士に相談することが一つの選択肢です。

一方で、社会保険労務士は、社会保険や労働保険に関する事務を扱う専門家です。
一般の社会保険労務士は会社との交渉を代理できませんが、特定社会保険労務士は、あっせんなどの紛争解決手続で和解交渉を代理できます(社会保険労務士法第2条)。

退職代行などの民間サービスを利用する場合、その業者が会社と交渉する権限を持っているか注意が必要です。
交渉が必要な事案であれば、弁護士でなければ扱えない範囲に入ることがあります。

解雇予告手当の未払いや、裁判での付加金の請求を検討する場合は、弁護士への相談が適しています。
付加金の請求の法定期間は、違反があった時から 3年以内ですが、当分の間は3年です。

参考:労働基準法 第114条|デジタル庁

解雇に関するよくある勘違い

解雇予告の手続きさえ守っていれば、どのような解雇も有効ですか?

いいえ、解雇予告の手続きを守っているからといって、その解雇が必ずしも有効になるわけではありません。解雇予告は、会社が守るべき手続きの一つにすぎません。

解雇が有効であるためには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である必要があります。理由がない解雇は、手続きが正しくても無効と判断されることがあります。

解雇された直後に、すぐに会社へ損害賠償を請求できますか?

損害賠償が認められるとは限りませんが、解雇直後に会社へ請求すること自体は可能です。解雇が不当であると認められる必要があります。

会社への請求や交渉は裁判などの前でも可能であり、労働局のあっせんも解雇の無効を公権的に判断する手続きではありません。まずは、ご自身の状況がどのようなルールに該当するか、事前の確認が要ります。

会社から「今日で辞めてくれ」と言われたら、その場で応じるべきですか?

いいえ、その場ですぐに退職届を書いたり、解雇を受け入れたりする必要はありません。解雇には、労働基準法に基づくルールがあります。

会社が即日解雇を行う場合は、原則として解雇予告手当を支払う義務があります。また、解雇の理由が妥当かどうかも慎重に判断する必要があります。判断に迷う場合は、労働局などの窓口に相談してください。

退職代行を使えば、会社との解雇トラブルをすべて解決できますか?

弁護士や労働組合ではない民間業者の退職代行は、解雇の無効や金銭について交渉できず、原則として退職の意思を伝える範囲に限られます。

解雇の無効を主張したり、未払い賃金の支払いを求めたりする交渉が必要な場合は、弁護士に相談することが一つの選択肢です。交渉の権限を持つ専門家へ依頼することを検討してください。

参考:労働基準法 第20条(解雇の予告)|e-Gov法令検索(デジタル庁)

まとめ

不当な解雇は、労働者だけでなく会社側にも大きな負担を強いることになります。適切な手続きや理由を欠いたまま解雇を行うと、法的な責任を問われる可能性があるためです。

これまでの内容を整理すると、以下の通りです。

  • 解雇には労働基準法に基づく予告の手続きや、解雇制限のルールがあります。
  • 解雇予告手当の支払いは、即日解雇などの場合に会社に義務付けられています。
  • 解雇が有効であるためには、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。
  • 退職代行は退職の意思を伝えるためのもので、解雇の無効や金銭交渉の権限はありません。
  • 交渉が必要な場合は、交渉権限を持つ弁護士への相談が選択肢となります。

もし解雇の理由に納得がいかない場合や、手続きが法律に従っていないと感じる場合は、お金のかからない相談先を確認してください。労働局などの公的な窓口が、解決に向けた判断の助けになります。

また、解雇に伴う手続きや、その後の生活設計については、失業に関する情報もあわせて参照してください。

この記事の根拠(本文内23か所・台帳5項目・一次資料1件)

制度の数値(台帳から出しています)

一次資料

数値は一次情報で確かめてから台帳に入れています(情報源について)。リンク先の内容が変わっているのを見つけたら訂正の受付までお知らせください。

この記事の編集責任者

JPSM INTERNET SERVICE 代表

小笠原 治輝おがさわら はるき

休職から退職までの手続きを自分で経験しました。傷病手当金の申請、雇用保険の受給期間延長、健康保険と年金の切り替えを実際に進めた経験があります。記事は、厚生労働省・e-Gov法令検索・ハローワークの一次情報と突き合わせて確認しています。