雇用保険と傷病手当金の使い分けと手続きの期限

雇用保険と傷病手当金、どちらをいつ使うべきか

病気やケガで働けない期間、雇用保険の失業給付と健康保険の傷病手当金のどちらを受け取るべきか迷うことがあります。この記事では、会社に在籍している間と退職した後で、どちらの制度が適用されるのか、手続きの期限を含めて解説します。

  • 在籍中は傷病手当金、退職後は雇用保険の基本手当が検討対象になる
  • 傷病手当金には連続した待期期間が必要
  • 任意継続の加入には退職翌日から20日以内の申出が必要

最終更新: / 出典: 全国健康保険協会(協会けんぽ)

雇用保険と傷病手当金、どちらを使うか決めるまでの流れ

病気やケガで働けなくなったとき、利用できる制度は状況によって異なります。
会社に在籍したまま休むか、退職して次の仕事を探すかで、選ぶべき制度が変わります。

判断の目安となる5つの工程をまとめました。

  1. 現在の状況を確認する
    現在の雇用形態や、会社に休職制度があるかを確認します。
  2. 傷病手当金の受給要件を確認する
    傷病手当金(病気やケガで会社を休んだときに、健康保険から支払われる手当)を受け取れる状態かを確認します。
  3. 雇用保険の受給要件を確認する
    雇用保険(離職したあとに、失業保険などの給付を受けるための制度)の対象になるかを確認します。
  4. 支給額の目安を計算する
    働けない場合は傷病手当金、働ける状態で求職する場合は雇用保険の基本手当について、それぞれ受給要件を確認します。
  5. 手続きを進める
    状況に合わせて、会社やハローワーク(公共職業安定所)へ手続きを行います。

傷病手当金の額は、標準報酬月額(毎月の給与を区切りのよい額に当てはめた、保険料を決めるための金額)をもとに計算されます。
支給額は、標準報酬月額の平均を30で割った額に 3分の2 を掛けた金額が目安です。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

被保険者期間が12か月未満の場合、本人の標準報酬月額の平均と 320,000円 の低い方を使います。
ただし、比較に用いる全被保険者の標準報酬月額の平均額は、年度により変わることがあります。

一方、雇用保険の基本手当を受けるには、受給資格決定日から一定の待期(基本手当が支給されない期間)が必要です。
待期期間は 7日 間となります。

参考:ハローワークインターネットサービス|雇用保険の具体的な手続き|厚生労働省

傷病手当金は、連続して 3日 間休んだ待期を満たし、その待期が完成した日の翌日以降も仕事に就けなかった場合に支給対象となります。
この待期期間には、土日祝などの公休日や有給休暇も含まれます。

支給期間は、支給を開始した日から通算して 1年6か月 です。
退職後に継続して受給するには、退職日までに続けて 1年 以上被保険者であるなどの条件があります。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

退職後に健康保険を継続する方法として、任意継続(退職後も、以前加入していた健康保険に引き続き加入する仕組み)もあります。
任意継続を希望する場合は、退職日の翌日から 20日以内に申し出る必要があります。

参考:任意継続被保険者制度|全国健康保険協会(協会けんぽ)

任意継続で加入できる期間は、原則として 2年 です。
ただし、他の健康保険に加入した場合や、保険料を期限までに納めなかった場合は、途中で資格を失うことがあります。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・加入・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

どちらの制度を利用するかは、現在の体調や、今後の働き方の予定によって決まります。
ご自身の状況に合わせて、事前の確認が重要です。

手続きを忘れないための期限一覧

手続きには、それぞれ期限があります。期限を過ぎると、受けられるはずの給付が受けられなくなる可能性があるため注意が必要です。主な手続きの期限をまとめました。

主な手続きの期限
手続きの内容 期限の目安 備考
任意継続への加入 退職日の翌日から20日以内 郵送の場合は必着に注意
傷病手当金の継続給付 資格喪失日の前日の状態を確認 受給中または受給できる状態などの要件がある
雇用保険の基本手当 所定の受給期間内 受給には待期期間が必要

任意継続への加入は、退職後の健康保険を維持するための重要な手続きです。協会けんぽの場合、退職日の翌日から20日以内に申し出る必要があります。ただし、20日目が土日・祝日の場合は翌営業日が期限となります。

郵送で手続きを行う際は、期限内に保険者に書類が届くよう余裕を持って準備してください。期限を過ぎると任意継続は選べなくなるため、退職後にいち早く確認すべき項目です。

参考:任意継続被保険者制度|全国健康保険協会(協会けんぽ)

傷病手当金の継続給付(退職後も、一定の条件を満たせば引き続き手当を受けられる仕組み)を受けるには、資格を喪失する日の前日までに、継続して1年以上の被保険者期間が必要です。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

この期間には、任意継続被保険者や、国民健康保険に加入していた期間は含まれません。また、資格を喪失する前日に、現に傷病手当金を受けているか、あるいは受けられる状態であることも条件となります。

ただし、支給期間は通算して1年6か月までです。支給開始日から通算して計算されるため、受給状況に注意してください。

雇用保険の基本手当の受給期間は原則として離職日の翌日から1年間ですが、病気などによる延長制度があります。自己都合による離職の場合、原則として1か月の給付制限期間が発生します。

ただし、教育訓練等を受ける場合などは、給付制限が解除されるケースもあります。受給のタイミングが遅れると、1年の期限内に給付が終わらない可能性があるため注意が必要です。

参考:令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます|厚生労働省

手続きの窓口は、健康保険については加入している保険者(協会けんぽ等)、雇用保険については管轄のハローワーク(公共職業安定所)となります。制度ごとに窓口が異なるため、早めの確認が推奨されます。

参考:雇用保険の具体的な手続き|厚生労働省

傷病手当金を受け取るための手順と条件

傷病手当金を受け取るには、まず連続して3日の待期期間(仕事を休んだ期間)が必要です。待期には、土日や祝日、有給休暇などの公休日も含まれます。

この待期期間を終えた後、4日目以降の療養のため仕事に就けなかった日に対して支給されます。支給される金額は、標準報酬月額の平均を30で割った額に、3分の2を掛けた金額です。

休んだ3日のあと、4日目から支給されます1日目2日目3日目4日目から支給待期(3日)は支給されません。土日・祝日や有給休暇も入ります支給される期間通算1年6か月1日あたりの額標準報酬日額の3分の2
傷病手当金は、いつから・どれくらい出るか制度の適用時点:2026-07/確認日:2026-07-26/出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)

支給が開始された日から、通算して1年6か月の間、給付を受けることができます。2022年(令和4年)1月1日からは、支給期間の計算が通算方式に変更されました。

ただし、支給開始日以前の被保険者期間が12か月未満の場合は、本人の標準報酬月額の平均額と320,000円の低い方を使います。年度替わりで見直されるため、最新の数値を確認してください。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

申請の手順は、まず医師に症状を診断してもらい、療養のための書類を作成します。その後、会社を通じて加入している健康保険組合や協会けんぽへ申請書を提出する流れが一般的です。

退職後に継続して受給したい場合は、資格喪失日の前日までに1年以上の被保険者期間が必要です。また、資格喪失日の前日に現に受給しているか、受けられる状態で、退職日に出勤していないことも必要です。

なお、この被保険者期間には、任意継続被保険者や国民健康保険に加入していた期間は含まれません。支給期間の計算において、途中で復職して給付が止まった期間は通算されません。

現在の状況と、確認すべき制度の例
いまの立場 扱い 次に見るところ
正社員 健康保険の被保険者 傷病手当金の受給要件
契約社員 健康保険の被保険者 傷病手当金の受給要件
パート・アルバイト 条件を満たせば健康保険の被保険者 傷病手当金の受給要件
休職中で在籍している人 健康保険の被保険者 傷病手当金の受給要件
退職して任意継続を選んだ人 任意継続被保険者 任意継続の保険料
退職して国民健康保険に入った人 国民健康保険の被保険者 国民健康保険の保険料
家族の扶養に入った人 被扶養者 扶養の条件
産前産後休業の人 健康保険の被保険者 出産手当金の受給要件

退職後の健康保険(任意継続)の手続きと上限額

退職後に健康保険の任意継続を選ぶ場合、手続きの期限と保険料の仕組みを把握しておく必要があります。加入できる期間や、支払う金額の目安は以下の通りです。

  • 申出の期限は、退職日の翌日から 20日以内
  • 任意継続として加入できる期間は 2年
  • 東京都における保険料率は 10.08% (子ども・子育て支援金率を含む)
  • 標準報酬月額の上限は 320,000円

手続きの期限を過ぎると、任意継続は選べなくなります。退職後にいちばん先に確認すべき期限のひとつです。

手続きの期限と加入できる期間

任意継続の手続きには、退職後の日数による制限があります。協会けんぽの制度を利用する場合、退職日の翌日から 20日以内 に申出が必要です。

20日目が土日や祝日の場合は、翌営業日までとなります。郵送を利用する場合は、20日以内に書類が相手方に届くよう手配してください。ただし、正当な理由があると保険者が認めたときは、20日を過ぎた申し出が認められる場合があります(健康保険法第37条第1項ただし書き)。

加入できる期間は 2年 です。ただし、他の健康保険に加入した場合や、保険料を期限までに納めなかった場合などは、途中で資格を失うことがあります。

保険料の負担額と上限の仕組み

任意継続被保険者は、保険料の全額を自分で負担します。在籍中とは異なり、会社が半分を負担することはありません。

東京都の場合、保険料率は 10.08% です。この数値には、健康保険料率と子ども・子育て支援金率の合計が含まれます。40歳から64歳までの人は、これに介護保険料率が加わります。

保険料の計算の基礎となる標準報酬月額には、上限があります。令和8年度の協会けんぽでは 320,000円 です。

退職時の標準報酬月額がこの数値を超える人は、この上限で計算が止まります。そのため、退職後のほうが保険料が安くなるケースが見られます。年度ごとに見直されるため、事前の確認が要ります。

なお、任意継続の保険料は、加入している健康保険組合によって異なる場合があります。

ご自身が加入していた保険が協会けんぽか、独自の健康保険組合かによって、手続き先や保険料の算出方法が異なるため注意してください。

参考:任意継続被保険者制度|全国健康保険協会(協会けんぽ)


参考:【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について|全国健康保険協会(協会けんぽ)


参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)の任意継続被保険者の方の保険料額(令和8年4月分〜・東京支部)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

手続きがうまくいかないときの相談先

制度の仕組みや手続きの進め方について、疑問や不安を感じる場面は少なくありません。
状況によって、相談すべき窓口は異なります。

雇用保険の手続きに関する相談

離職後の基本手当(失業保険)の手続きや、給付の条件について確認したい場合は、管轄のハローワークへ相談してください。
ハローワークは、雇用保険の具体的な手続きを行う機関です。

受給できるかどうかの判定や、必要な書類の書き方などは、窓口で詳しく説明を受けられます。
ただし、個別の事情によって判断が分かれることもあるため、事前の確認が要ります。

例えば、自己都合による離職で給付制限期間が適用される場合などは、受給開始時期が異なります。
また、教育訓練を受けることで給付制限が解除されるケースもあるため、条件の確認が重要です。

参考:令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます | 厚生労働省|厚生労働省


参考:ハローワークインターネットサービス|雇用保険の具体的な手続き | 厚生労働省|厚生労働省

健康保険の手続きに関する相談

健康保険の資格や、傷病手当金の支給について確認したい場合は、加入している保険者へ相談してください。
退職後に任意継続を選ぶ場合は、以前加入していた健康保険組合や協会けんぽが窓口になります。

保険料の支払い方法や、傷病手当金の申請に必要な医師の証明について、具体的な手順を聞くことができます。
保険者によって、手続きの細かなルールが異なる場合があるため、直接問い合わせるのがスムーズです。

傷病手当金の支給要件である「連続する3日間の待期期間」の数え方や、支給期間の計算についても確認しましょう。
待期期間には、土日祝などの公休日や有給休暇も含まれます。

また、支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。
ただし、退職後の継続給付を受けるには、退職日までに続けて1年以上、被保険者である必要があります。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金) | 全国健康保険協会(協会けんぽ)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

任意継続の手続きには「退職日の翌日から20日以内」という期限があります。
この期限を過ぎると任意継続を選択できなくなるため、退職後すぐに保険者へ連絡してください。

郵送の場合は、期限内に書類が必着している必要があります。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付) | 全国健康保険協会(協会けんぽ)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

任意継続の保険料については、加入する保険者や都道府県によって異なります。
例えば、協会けんぽの東京支部の場合、保険料率は10.08%です。

参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)の任意継続被保険者の方の保険料額(令和8年4月分〜・東京支部) | 全国健康保険協会(協会けんぽ)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

雇用保険と傷病手当金に関するよくある勘違い

傷病手当金をもらっていれば、雇用保険の基本手当は受け取れませんか

両方の要件を満たせば、どちらも受け取れる場合があります。
傷病手当金は病気やケガで働けない期間を支えるためのものです。
受給資格決定後に病気やケガで15日以上働けないときは、基本手当ではなく雇用保険の傷病手当の対象になり得ます。

ただし、同じ期間に両方の給付を重複して受け取ることはできません。

休職して給与が出ていない間、社会保険料の支払いは止まりますか

いいえ、休職中も健康保険と厚生年金の資格は続くため、保険料の支払いは止まりません。
給与が支払われていない場合でも、保険料の負担割合は変わりません。
会社と本人が半分ずつ負担する仕組みです。

本人負担分をどのように会社へ支払うかは、あらかじめ会社と決めておく必要があります。

退職して任意継続を選んだら、保険料は在籍中より高くなりますか

はい、在籍中よりも高くなることがあります。
在籍中は会社が保険料の半分を負担していますが、任意継続では本人が全額を負担します。
そのため、支払う金額は、在職中の本人負担分と比較しておよそ2倍になります。

ただし、退職時の標準報酬月額が 320,000円を超える場合は、この上限額が適用されます。

参考:【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について|全国健康保険協会(協会けんぽ)

ハローワークでの求人情報の閲覧だけで、求職活動実績になりますか

いいえ、求人情報を閲覧しただけでは実績になりません。
求人への応募や、許可・届け出のある職業紹介事業者が行う職業相談などが対象です。

実績として認められる具体的な内容は、管轄のハローワークで確認してください。

参考:ハローワークインターネットサービス|雇用保険の具体的な手続き|厚生労働省

まとめ

この記事で確認した内容は、以下の通りです。

  • 傷病手当金は、病気やケガで働けない期間を支えるための制度です。支給開始日から通算して1年6か月の間、支給される場合があります。ただし、受給には連続する3日間の待期期間が必要です。
  • 雇用保険の基本手当は、失業して仕事を探している期間を支えるための制度です。自己都合退職の場合、原則として1か月の給付制限がかかります。
  • 両方の要件を満たせば、どちらも受け取れる場合がありますが、同じ期間に重複して受け取ることはできません。
  • 任意継続の手続きには、退職日の翌日から20日以内という期限があります。この期限を過ぎると、任意継続は選べなくなるため注意が必要です。
  • 任意継続では、保険料は本人が全額を負担します。例えば東京都の場合、保険料率は10.08%となります。ただし、40歳から64歳の方は介護保険料率も加算されます。
  • 手続きの期限を過ぎると、受けられるはずの給付が受けられなくなることがあります。

制度の利用にあたっては、ご自身の状況に合わせて傷病手当金雇用保険の仕組みを正しく理解しておくことが大切です。

この記事の根拠(本文内39か所・台帳11項目・一次資料7件)

制度の数値(台帳から出しています)

一次資料

数値は一次情報で確かめてから台帳に入れています(情報源について)。リンク先の内容が変わっているのを見つけたら訂正の受付までお知らせください。

この記事の編集責任者

JPSM INTERNET SERVICE 代表

小笠原 治輝おがさわら はるき

休職から退職までの手続きを自分で経験しました。傷病手当金の申請、雇用保険の受給期間延長、健康保険と年金の切り替えを実際に進めた経験があります。記事は、厚生労働省・e-Gov法令検索・ハローワークの一次情報と突き合わせて確認しています。