傷病手当金の確定申告と税金の扱い

傷病手当金は確定申告の対象になるのか

傷病手当金を受け取っている方が、所得税の確定申告をどのように進めるべきかについて解説します。傷病手当金は非課税の給付金であるため、原則として所得税の計算に含める必要はありません。

  • 傷病手当金は非課税所得のため確定申告の対象外です
  • 給与所得と傷病手当金は分けて考えます
  • 年末調整で傷病手当金を含める必要はありません

最終更新: / 出典: 全国健康保険協会

傷病手当金と確定申告の手続きの流れ

傷病手当金(病気やけがで仕事を休んだときに、健康保険から支払われる手当)を受け取りながら、確定申告(1年間の所得を計算して税金を計算する手続き)を行う際の流れをまとめました。

手続きは、大きく分けて次の5つの工程になります。

  1. 傷病手当金の支給申請を行う
  2. 健康保険組合などから手当の支給を受ける
  3. 手当の受取額を記録しておく
  4. 確定申告が必要な場合も、傷病手当金は所得に含めず申告する
  5. 申告者が所得と税額を計算して申告し、過不足を精算する

傷病手当金は、受け取った金額が「非課税(税金がかからないこと)」として扱われます。そのため、確定申告の際に所得として加算する必要はありません。

支給申請の際は、医師と事業主の証明が必要です。連続して 3日間の待期期間を経て、4日目以降の労務不能日に対して支給対象となります。

支給される額は、標準報酬月額の平均を30で割った額に 3分の2を掛けた金額が目安です。ただし、支給期間には通算して 1年6か月の上限があります。

退職後に「資格喪失後の継続給付(退職後も一定の条件で手当の支給が続く仕組み)」を受ける場合は、注意が必要です。この継続給付を受けるには、退職日までに、継続して 1年以上の期間、被保険者である必要があります。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

継続給付の要件を満たしているかどうかは、加入している健康保険の組合などが判断します。事前の確認が要ります。ただし、任意継続被保険者として加入している期間は、継続給付の被保険者期間には算入できません。

また、退職後に健康保険を切り替える際は、手続きの期限にも注意しましょう。例えば、協会けんぽの任意継続被保険者になるには、退職日の翌日から 20日以内に申し出る必要があります。

参考:任意継続被保険者制度|全国健康保険協会(協会けんぽ)

任意継続被保険者の期間は、原則として 2年です。ただし、他の健康保険の被保険者になった場合や、保険料を期限までに納めなかった場合などは、途中で資格を失うことがあります。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

なお、任意継続の保険料は全額自己負担となります。協会けんぽの東京支部の例では、令和8年4月分から保険料率が 10.08%となっています。

参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)の任意継続被保険者の方の保険料額(令和8年4月分〜・東京支部)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

さらに、任意継続の標準報酬月額には上限があります。協会けんぽの場合、令和8年度の上限は 320,000円です。

参考:【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について|全国健康保険協会(協会けんぽ)

いつまでに手続きを行うか

傷病手当金の支給を受けるには、まず「待期期間」を満たす必要があります。待期期間とは、病気やけがによって仕事に就けなくなった状態が続く期間のことです。

この期間は、連続して 3日 を含み、4日以上仕事に就けなかったことが要件となります。待期期間には、土日や祝日などの公休日、および有給休暇も含まれます。

支給申請の手続きについては、以下の表にまとめています。

傷病手当金の申請に関する目安
手続きの内容 時期の目安 確認先
支給申請書の提出 療養を開始した時期に合わせて 健康保険組合など
継続給付の申請 退職後、資格を喪失した後 健康保険組合など

(各保険者による)

傷病手当金を請求する権利は、労務不能であった日ごとに、その翌日から2年で時効になります。会社に在籍している間は、会社を通じて手続きを進めるのが一般的です。

退職後に「継続給付」を受ける場合は、退職後の手続きについても事前の確認が要ります。ご自身の加入している健康保険組合などの窓口へ、早めに相談してください。

継続給付の要件の一つは、資格喪失日の前日までに、続けて 1年 以上被保険者であることです。ただし、任意継続被保険者や共済組合の組合員としての期間は、この要件には含まれません。

また、退職後に任意継続被保険者を選択する場合、協会けんぽでは退職日の翌日から 20日以内 に資格取得申出書を提出する必要があります。この期限を過ぎると任意継続は選べなくなるため、注意が必要です。

支給期間は、支給を開始した日から通算して 1年6か月 までとなります。ただし、支給開始日によって計算方法や上限が異なる場合があるため、詳細は加入中の保険者へ確認してください。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

申請書には医師の証明が必要となるため、療養中の通院に合わせて準備を進めましょう。申請書の様式や提出方法、医師への依頼手順は、加入している保険者によって細かなルールが異なります。

退職後に任意継続被保険者として加入する場合、保険料の支払いについても確認が必要です。協会けんぽの東京支部であれば、令和8年4月分から保険料率は 10.08% となっています。

なお、任意継続の標準報酬月額には上限があり、協会けんぽでは 320,000円 が適用されます。退職時の報酬額によっては、この上限によって保険料が抑えられるケースもあります。

任意継続の被保険者期間は、原則として 2年 です。ただし、他の健康保険に加入した場合や、保険料を期限までに納めなかった場合などは、途中で資格を失うことがあります。

傷病手当金にかかる所得税と年末調整の扱い

傷病手当金は、所得税法上の「非課税」の給付です。
受け取った金額に対して、所得税や住民税が課されることはありません。

そのため、会社で行う年末調整の対象にも含まれません。
振込方法にかかわらず、傷病手当金は非課税であり、税金の計算には含まれません。

支給額の計算は、標準報酬月額の平均を30で割った額(10円未満四捨五入)に、3分の2を掛けた金額が目安となります。
支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。

休んだ3日のあと、4日目から支給されます1日目2日目3日目4日目から支給待期(3日)は支給されません。土日・祝日や有給休暇も入ります支給される期間通算1年6か月1日あたりの額標準報酬日額の3分の2
傷病手当金は、いつから・どれくらい出るか制度の適用時点:2026-07/確認日:2026-07-26/出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)

図には、支給の仕組みに関する目安が示されています。

立場別の傷病手当金の扱い
いまの立場 傷病手当金の扱い 次に見るところ
正社員 給与の代わりに支給される 支給申請の手続き
契約社員 給与の代わりに支給される 支給申請の手続き
パート・アルバイト 給与の代わりに支給される 支給申請の手続き
休職中で在籍している人 非課税の給付として受け取る 保険料の支払い方法
退職して任意継続を選んだ人 継続給付の要件を確認する 継続給付の条件
退職して国民健康保険に入った人 継続給付の要件を確認する 継続給付の条件
家族の扶養に入った人 支給要件を満たせば受け取れる 扶養の条件
産前産後・育児休業の人 傷病手当金とは別の制度 各種休業手当

傷病手当金は非課税のため、確定申告で所得に加える必要はありません。

ただし、会社から「傷病手当金」ではなく「給与」として支払われる場合は注意が必要です。
休職中であっても、会社から給与が支払われている場合は、その金額は課税対象となります。

給与所得の計算では、年間の給与収入から給与所得控除を差し引きます。
給与収入が650,000円以下の場合は、実際の給与収入額が控除限度となります。
また、給与収入が850万円を超える場合は、控除額は1,950,000円が上限です。

参考:No.1410 給与所得控除|国税庁

傷病手当金そのものは非課税ですが、会社から支給される「手当」の中身が、
社会保険上の傷病手当金なのか、課税対象となる給与なのかを、
給与明細や会社からの通知で必ず確認するようにしてください。

もし、会社から「休業手当」などの名目で給与と一緒に支払われている場合は、
それは所得税の対象となる「給与所得」として扱われます。
支給名目だけでなく、税務上の区分を会社へ確認しておくと安心です。

また、傷病手当金を受給している期間中に、一部の給与が支払われるケースもあります。
その場合、支払われた給与分については、通常通り所得税の源泉徴収が行われます。

年末調整の際、非課税の傷病手当金が給与に含まれていないか、改めて確認しましょう。

傷病手当金が非課税である理由と税金の仕組み

傷病手当金は所得税法により非課税所得と定められています。受け取った金額に対して所得税や住民税が課されることはありません。

確定申告の際に所得として加算する必要はなく、手当金の額に関わらず税金の計算に含める必要もありません。

給与を受け取っている場合

会社を休みながら給与の一部や全額を受け取っている状況では、税金の扱いに注意が必要です。給与は「課税対象」ですが、傷病手当金は「非課税」です。

ただし、給与が傷病手当金の額より少ない場合は、その差額の傷病手当金が支給されます。給与が傷病手当金以上なら支給されず、給与が少なければ差額が支給されます。

休職中に会社から「手当」の名目で支給されるお金が、社会保険上の傷病手当金なのか、課税対象となる給与なのかは、給与明細や会社からの通知で必ず確認してください。

もし、会社から「休業手当」などの名目で給与と一緒に支払われている場合は、それは所得税の対象となる「給与所得」として扱われます。支給名目だけでなく、税務上の区分を会社へ確認しておくと安心です。

退職後に継続給付を受ける場合

退職後に「資格喪失後の継続給付」を受ける場合も、税金の扱いは同じです。継続給付として受け取る手当金も、非課税の扱いとなります。

継続給付を受けるには、退職日までに続けて 1年 以上の被保険者期間が必要です。ただし、退職時にすでに傷病手当金を受けているか、受けられる状態である必要があります。

支給額の計算において、標準報酬月額が影響することがあります。例えば、被保険者期間が12か月未満の場合、計算に用いる標準報酬月額には上限が設けられています。

令和7年4月1日以降の支給開始であれば、その上限額は 320,000円 です。この数値は、前年度の全被保険者の平均額をもとに年度替わりで見直されます。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

資格喪失後の継続給付の額には、任意継続の標準報酬月額の上限は適用されません。令和8年度の任意継続被保険者の上限額は 320,000円 です。

参考:【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について|全国健康保険協会(協会けんぽ)

上限額は、退職時の標準報酬月額と、前年9月30日時点の全被保険者の平均額の低いほうとなります。ただし、年度替わりで見直されるため、最新の情報を必ず確認してください。

手続きがうまくいかないときの相談先

傷病手当金の申請や退職後の手続きを進める中で、疑問や困りごとが生じる場面があります。状況によって、相談すべき窓口は異なります。

会社とのやり取りや給付の申請に関する場合

休職中の傷病手当金の申請や、会社から受け取るべき金品の返還について困っているときは、まずは勤務先の担当部署に確認してください。会社は、労働者の権利に属する金品を返還する義務を負っています。

もし会社との間で、支払われるべき金額や返還の時期について争いがある場合は、労働基準監督署などの公的な機関に相談することを検討してください。

会社が適切な対応をしない場合、法的な解決が必要になることがあります。ただし、会社との間で法的な交渉が必要な場面では、弁護士でなければ扱えない用件に該当することがあります。

ここでは、弁護士が行う業務については扱えません。

保険の継続や制度の適用に関する場合

退職後の健康保険の継続や、傷病手当金の継続給付について確認したいときは、加入していた健康保険組合や協会けんぽへ相談してください。

制度の適用要件や、具体的な手続きの方法について説明を受けることができます。

退職後に任意継続被保険者を選択する場合、加入の手続きには期限があります。協会けんぽの場合、退職日の翌日から20日以内に申し出る必要があります。ただし、正当な理由があると保険者が認めたときは、20日を過ぎた申し出が認められる場合があります(健康保険法第37条第1項ただし書き)。ただし、20日目が土日・祝日の場合は翌営業日が期限です。

郵送の際は20日以内に必着させる必要があるため注意してください。

期限を過ぎると、希望しても任意継続には加入できません。また、任意継続被保険者としていられる期間は原則2年間です。

ただし、他の健康保険の被保険者になったときや、保険料を納付期限までに納めなかったときなどは、途中で資格を失います。

退職後に新たに発生した病気やけがについては、任意継続の制度では傷病手当金を受け取ることはできません。退職前に受給していた手当の継続については、加入していた保険者へ直接問い合わせてください。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

なお、任意継続被保険者の標準報酬月額には上限があります。令和8年度の協会けんぽにおける上限額は 320,000円 です。

退職時の標準報酬月額がこの数値を超える人は、この上限で頭打ちになるため、退職後のほうが保険料が安くなるケースもあります。

参考:【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について|全国健康保険協会(協会けんぽ)

傷病手当金の税金に関するよくある勘違い

傷病手当金を受け取ったら、確定申告で所得として報告しなければなりませんか

いいえ、傷病手当金は所得税法において非課税と定められた給付です。
そのため、確定申告の際に所得として加算したり、申告書に記載したりする必要はありません。

ただし、会社から支払われる「給与」と「傷病手当金」を混同しないよう注意してください。
給与は課税対象ですが、手当金は非課税です。

傷病手当金をもらっている間、住民税の支払いは止まりますか

いいえ、住民税の支払い義務は止まりません。
住民税は前年の所得に基づいて計算されるため、手当金の受給有無にかかわらず発生します。

傷病手当金は非課税所得のため、住民税の計算対象となる所得には含まれません。
前年の所得が高い場合は、手当金受給中も住民税の負担が続く点に留意してください。

退職後に「資格喪失後の継続給付」を受けた場合、税金の扱いが変わりますか

いいえ、退職後に受ける継続給付についても、税金の扱いは変わりません。
退職時に受給中か受給要件を満たしていた手当が支払われる場合も、非課税の扱いとなります。

支給を受けるための要件(被保険者期間が1年以上必要など)については、
加入していた保険者へ直接確認してください。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

退職後に国民健康保険に加入した場合、傷病手当金はもらえなくなりますか

いいえ、退職前に受給していた手当の継続給付の要件を満たしていれば、
元の健康保険者から支給が続くことがあります。

退職前に一定の条件を満たしていれば、退職後に国民健康保険へ加入しても、
以前の保険者から給付を受けられる仕組みがあります。
ただし、支給の可否は加入していた保険者の判断によります。

まとめ

この記事で確認した内容は、以下の通りです。

  • 傷病手当金は所得税がかからない非課税の給付です
  • 確定申告の際に所得として加算する必要はありません
  • 住民税の計算対象となる所得にも含まれません
  • 退職後の継続給付についても、非課税の扱いは変わりません
  • 退職後に国民健康保険へ加入しても、継続給付の要件を満たせば支給が続くことがあります

傷病手当金は非課税のため、年末調整や確定申告で給与所得と合算して申告する必要はありません。

ただし、会社から支払われる「休業補償」などの性質が異なる手当金については、課税対象となる場合があるため注意が必要です。また、退職後に「資格喪失後の継続給付」を受ける際も、非課税の扱いは維持されます。

支給要件や手続きの詳細は、加入している健康保険組合や協会けんぽへ直接確認してください。制度の詳細は、病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)でも確認できます。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

手続きや税金の扱いについて、より詳しい情報を知りたい方は健康保険の仕組み税金の知識もあわせて確認してください。

この記事の根拠(本文内26か所・台帳11項目・一次資料6件)

制度の数値(台帳から出しています)

一次資料

数値は一次情報で確かめてから台帳に入れています(情報源について)。リンク先の内容が変わっているのを見つけたら訂正の受付までお知らせください。

この記事の編集責任者

JPSM INTERNET SERVICE 代表

小笠原 治輝おがさわら はるき

休職から退職までの手続きを自分で経験しました。傷病手当金の申請、雇用保険の受給期間延長、健康保険と年金の切り替えを実際に進めた経験があります。記事は、厚生労働省・e-Gov法令検索・ハローワークの一次情報と突き合わせて確認しています。