休職中の年末調整は、給与の支払い状況や退職の有無によって手続きが変わります
休職中の会社員の方が、年末調整をどのように進めるべきかについて解説します。給与が支払われていない場合の扱い、傷病手当金との関係、退職後に任意継続を選ぶ場合の保険料の仕組みなど、状況に応じた対応をまとめています。
- 給与の支払いがある場合は会社で年末調整を行う
- 給与が止まっている場合は自身で確定申告が必要になることがある
- 退職後は任意継続の保険料負担が変わる

休職中の年末調整はどのような流れで行われるか
休職中でも、扶養控除等申告書を提出し、年末調整の対象要件を満たす場合は、原則として年末調整が行われます。会社から書類の提出を求められたら、指示に従って進めます。

休職中の年末調整は、主に以下の5つの工程で進みます。
- 会社から年末調整の書類を受け取る
- 控除(税金を安くするための計算の基礎となる項目)の情報を記入する
- 記入した書類を会社へ提出する
- 会社が給与額と控除額をもとに計算を行う
- 精算結果が給与や還付金として支払われる
年末調整では、その年の給与収入から給与所得控除(給与収入に応じて差し引ける、所得を計算するための金額)を差し引いて計算します。令和7年分以降の給与所得控除は、以下の通りです。
- 給与収入が190万円以下のとき、控除額は 650,000円
- 給与収入が850万円を超えるとき、控除額は 1,950,000円
休職中に傷病手当金(病気やケガで働けない期間に支給される手当)を受け取っている場合、その手当は税金がかかる「給与所得」には含まれません。そのため、年末調整の計算対象にはなりません。
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
その年に実際に支払った社会保険料や、給与から差し引かれた社会保険料が控除の対象となります。ただし、休職期間中に会社が社会保険料を立て替えている場合は、精算方法が異なる可能性があるため、事前に担当部署へ確認しましょう。
退職して任意継続を選択した場合は、保険料の負担方法が変わります。任意継続の保険料は、会社負担がなく全額自己負担となるため、年末調整の控除額に影響する場合があります。
例えば、東京都の協会けんぽに加入している場合、令和8年度の任意継続被保険者の保険料率は、健康保険料率に子ども・子育て支援金率を加えた 10.08% となります。ただし、この率は都道府県によって異なります。
また、任意継続被保険者の標準報酬月額には上限があります。令和8年度の協会けんぽにおける上限額は 320,000円 です。退職時の標準報酬月額がこれを超える場合は、上限額が適用されます。
手続きの期限についても注意が必要です。任意継続を希望する場合は、退職日の翌日から 20日以内に申し出る必要があります。この期限を過ぎると、正当な理由があると認められる場合を除き、任意継続を選択できないため注意してください。
年末調整の手続きをいつまでに済ませるか
年末調整の手続きには、会社が定める期限があります。会社は、従業員から集めた書類をもとに、12月の給与計算や年末の精算を行います。

休職中であっても、会社から書類の提出を求められた場合は、指定された期日までに提出する必要があります。提出が遅れると、正しい税額の計算が間に合わないことがあります。
手続きのタイミングは、会社によって異なります。以下の表は、一般的な事務の流れをまとめたものです。
| 時期 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 11月〜12月上旬 | 書類の配布・回収 | 会社から書類が届きます |
| 12月中旬 | 会社による計算 | 提出した書類をもとに計算します |
| 12月の給与時 | 精算の反映 | 所得税の還付や徴収が行われます |
(一般的な事務の流れに基づき作成)
休職中の場合は、会社との連絡手段を確認しておくことが大切です。書類の受け取りや提出方法について、事前に会社へ確認しておくことをおすすめします。
もし、会社から書類が届かない場合や、提出期限が不明な場合は、会社の担当部署へ問い合わせてください。会社が定めている独自のスケジュールがあるため、事前の確認が要ります。
書類の提出方法には、郵送や電子申請など、会社ごとに複数の手段が用意されている場合があります。休職中で会社へ出勤できない場合は、特に郵送の際の「必着日」に注意しましょう。
また、家族構成に変更があった場合や、生命保険料の控除を受ける場合は、別途証明書の準備が必要です。これらが揃っていないと、手続きが完了しない可能性があるため注意してください。
万が一、会社が定める期限を過ぎてしまった場合、その年の年末調整には間に合わないことがあります。ただし、確定申告を行うことで、後から税金の精算ができる仕組みもあります。
休職期間中の所得状況や、社会保険料の控除額が正しく反映されるよう、早めの準備を心がけましょう。不明な点は、会社の総務担当や人事担当窓口へ早めに相談してください。
傷病手当金の待期期間と給付のタイミング
休職中の生活を支える仕組みとして、傷病手当金があります。支給を受けるためには、まず一定の条件を満たす必要があります。

支給が始まるまでの条件
給付を受けるには、連続して仕事に就けなかった期間が必要です。この期間は、土日や公休日、有給休暇を含めて数えます。
- 連続して3日の待期が必要です
- 待期期間のあとに、支給の対象となる期間が発生します
- 1日当たりの支給額は、原則として支給開始日前12か月の標準報酬月額の平均額を30で割った額の3分の2です
支給額や期間の目安は、以下の図にまとめています。
図では、支給が開始されるタイミングと、受け取れる期間の長さが示されています。
待期期間は、連続して3日間、労務不能であることが条件です。ただし、待期期間中に一部の業務を行った場合は、待期が中断される可能性があります。
申請の手続きは、原則として勤務先の健康保険組合や協会けんぽへ行います。医師の証明が必要となるため、早めに主治医へ相談を進めておきましょう。
給付を受けられる期間
支給が開始されたあとの期間についても、あらかじめ決まりがあります。支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。
支給のルールについては、健康保険法に基づいています。支給期間の計算方法は、以下の通りです。
傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から通算して一年六月間とする。
引用:健康保険法 第99条第4項(e-Gov法令検索)
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
支給期間は「通算」して計算されます。途中で復職し、その後再び同じ病気で休んだ場合は、傷病手当金が支給された期間を通算します。
ただし、退職後に継続して受給したい場合は、別途条件があります。退職日までに被保険者期間が1年以上あることなどが条件となります。
継続給付の要件には、資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けているか、あるいは受けられる状態であることも含まれます。退職後の手続きについては、加入している健康保険組合へ確認してください。
任意継続の保険料と標準報酬月額の仕組み
退職後に健康保険の任意継続を選ぶ場合、保険料の計算の基礎となる標準報酬月額には上限があります。

健康保険法第47条では原則として両者の低いほうになりますが、健康保険組合は規約により「資格喪失時の標準報酬月額」などを用いる場合があります。
令和8年度の協会けんぽにおける、任意継続被保険者の標準報酬月額の上限は 320,000円 です。
参考:【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について|全国健康保険協会(協会けんぽ)
退職時の標準報酬月額がこの数値を超える人は、この上限で頭打ちになります。そのため、退職後のほうが健康保険料が安くなることがあります。ただし、個々の状況により異なります。
保険料の負担割合についても注意が必要です。在籍中のときは会社と本人が半分ずつ負担しますが、任意継続被保険者はその全額を負担します。
健康保険法第161条第1項ただし書に「任意継続被保険者は、その全額を負担する」と定められているためです。
参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
東京都における、令和8年4月分からの任意継続の保険料率は 10.08% です。
参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)の任意継続被保険者の方の保険料額(令和8年4月分〜・東京支部)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
この率は、東京支部の健康保険料率と子ども・子育て支援金率の合計です。40歳から64歳までの人は、これに介護保険料率も加わります。
| いまの立場 | 保険の扱い | 次に見るところ |
|---|---|---|
| 正社員 | 会社の健康保険 | 年末調整の手続き |
| 契約社員 | 会社の健康保険 | 年末調整の手続き |
| パート・アルバイト | 会社の健康保険 | 年末調整の手続き |
| 休職中で在籍している人 | 会社の健康保険 | 傷病手当金の受給 |
| 退職して任意継続を選んだ人 | 任意継続被保険者 | 保険料の支払い |
| 退職して国民健康保険に入った人 | 国民健康保険 | 保険料の支払い |
| 家族の扶養に入った人 | 家族の健康保険 | 扶養の条件 |
| 産前産後・育児休業の人 | 会社の健康保険 | 社会保険料の免除 |
手続きがうまくいかないときの相談先
年末調整や社会保険の手続きを進める中で、判断に迷う場面が出てくるかもしれません。
状況によって、相談すべき窓口は異なります。
会社とのやり取りで困っている場合
休職中の年末調整の手続きや、会社への保険料の支払い方法について確認したいときは、勤務先の担当部署へ相談してください。
給与の計算や書類の提出期限については、会社が管理しています。
会社との間で、支払いの方法や金額について法的な争いが生じている場合は、弁護士へ相談してください。
ここでは、会社との交渉を代行することはできません(弁護士法72条)。
会社から支払われるべき金品が、退職後などに適切に返還されないときは、労働基準監督署などの公的な機関へ相談することを検討してください。
制度の仕組みや給付について困っている場合
健康保険の給付や、任意継続の仕組みについて詳しく知りたいときは、加入している保険者へ相談してください。
協会けんぽに加入している場合は、全国健康保険協会が窓口となります。
任意継続の申出期限は、退職日の翌日から20日以内です。
20日目が土日・祝日の場合は翌営業日が期限となりますが、郵送の場合は20日以内に必着させる必要があります。
期限を過ぎると、正当な理由があると認められる場合を除き任意継続は選べないため、退職後にいちばん先に確かめるべき事項のひとつです。
参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
傷病手当金の支給要件や、支給開始日から通算して1年6か月という支給期間の詳細については、加入中の保険者へ確認してください。
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
失業等給付(基本手当)の受給要件や、給付制限に関する判断については、管轄のハローワークへ相談してください。
要件を満たせば給付を受けられる場合がありますが、最終的な判断はハローワークが行います。
休職中の年末調整に関するよくある勘違い
休職中で給与がゼロでも、年末調整の手続きは必要ですか。
会社に在籍している場合は、手続きが必要になることがあります。年末調整は、その年に支払われた給与の総額をもとに税額を計算する仕組みだからです。
給与が支払われていない期間があっても、会社は、年末調整の対象者について、その年に支払うことが確定した給与などを基に計算します。ただし、給与が全くない場合は手続きが不要となるケースもあります。
会社から書類の提出を求められたら、指示に従って進めてください。不明な点は、勤務先の担当部署へ確認しましょう。
傷病手当金を受け取っていますが、これも年末調整の対象になりますか。
いいえ、傷病手当金は年末調整の対象にはなりません。傷病手当金は、病気やケガで働けない期間の生活を支えるための給付だからです。
傷病手当金は所得税がかからないため、年末調整で扱う「給与」とは性質が異なります。
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
年末調整で扱うのは、あくまで会社から支払われる給与などの所得です。傷病手当金については、税金の計算に含める必要はありません。
休職して社会保険料を会社に立て替えてもらっている場合、年末調整で精算されますか。
いいえ、年末調整で社会保険料の立て替え分を精算する仕組みはありません。年末調整は、所得税の過不足を精算するための手続きです。
休職中に会社が支払った保険料の本人負担分については、別途、返済の方法を決めておく必要があります。精算の方法については、勤務先の担当部署へ確認してください。
退職して任意継続を選んだ場合、年末調整は会社で行ってもらえますか。
原則として年の途中で退職した場合、退職した会社では年末調整されませんが、一定の退職者は対象になります。退職後に年末調整を受けていない場合は、必要に応じて自分で確定申告を行います。
退職日までに支払われた給与がある場合は、会社から「源泉徴収票」を受け取ってください。その源泉徴収票を使って、翌年の確定申告の時期に手続きを進めます。
まとめ
- 会社に在籍し、その年に年末調整の対象となる給与がある場合は、休職期間中に給与の支払いがなくても手続きが必要です。
- 会社から書類の提出を求められたら、指定された期限までに提出してください。
- 年末調整は所得税の精算を行うもので、社会保険料の立て替え分を精算する仕組みではありません。
- 退職して任意継続を選ぶと、保険料は全額が本人の負担になります。
- 退職した年でも、再就職先や一定の場合は年末調整を受け、それ以外は必要に応じて確定申告を行います。
休職中の社会保険料の精算については、会社との間で別途、返済方法を相談しておきましょう。手続きの進め方や書類の提出期限については、勤務先の担当部署へ確認してください。
税金の計算については税金の仕組みに関する解説も参考にしてください。
この記事の根拠(本文内15か所・台帳9項目・一次資料7件)
制度の数値(台帳から出しています)
- 給与所得控除の最低額(給与収入190万円以下)650,000円時点:2026-04-01確認:2026-08-18国税庁|No.1410 給与所得控除
- 給与所得控除の上限額(給与収入850万円超)1,950,000円時点:2026-04-01確認:2026-08-18国税庁|No.1410 給与所得控除
- 任意継続の保険料率(協会けんぽ 東京支部・令和8年4月分から)10.08%時点:令和8年度(令和8年4月分から)確認:2026-07-27全国健康保険協会(協会けんぽ)|全国健康保険協会(協会けんぽ)の任意継続被保険者の方の保険料額(令和8年4月分〜・東京支部)
- 任意継続被保険者の標準報酬月額の上限(協会けんぽ・令和8年度)320,000円時点:令和8年度確認:2026-07-27全国健康保険協会(協会けんぽ)|【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について
- 任意継続の申出期限(退職日の翌日から)20日以内時点:2026-08確認:2026-08-14全国健康保険協会(協会けんぽ)|任意継続被保険者制度
- 傷病手当金の待期期間(連続して休む必要がある日数)3日時点:2026-07確認:2026-07-26全国健康保険協会(協会けんぽ)|病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
- 傷病手当金の支給割合(標準報酬日額に対する割合)3分の2時点:2026-07確認:2026-07-26全国健康保険協会(協会けんぽ)|病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
- 傷病手当金の支給期間(通算)1年6か月時点:2026-07確認:2026-07-26全国健康保険協会(協会けんぽ)|病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
- 資格喪失後の継続給付に必要な被保険者期間(退職日までに続けて)1年時点:2026-07確認:2026-07-27全国健康保険協会(協会けんぽ)|病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|資格喪失後の継続給付について
一次資料
- 国税庁|No.1410 給与所得控除
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)|病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)|全国健康保険協会(協会けんぽ)の任意継続被保険者の方の保険料額(令和8年4月分〜・東京支部)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)|【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)|任意継続被保険者制度
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)|任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)
- 厚生労働省|雇用保険の具体的な手続き
数値は一次情報で確かめてから台帳に入れています(情報源について)。リンク先の内容が変わっているのを見つけたら訂正の受付までお知らせください。