傷病手当金の申請書は誰が作成し、どこへ提出するのか
傷病手当金は、病気やケガで働けなくなったときに健康保険から支給される手当です。会社に在籍している人と、退職して任意継続被保険者になった人とでは、申請書の書き方や提出の進め方が異なります。この記事では、申請の手順や期限、立場ごとの役割を整理して解説します。
- 申請書の「療養のため労務に服することができない」欄は医師が記入します
- 申請書の「事業主記入欄」は会社が記入します
- 申請書は最終的に健康保険組合や協会けんぽへ提出します

傷病手当金を受け取るための5つの工程
傷病手当金(病気やケガで働けない期間に支給される手当)を受け取るには、いくつかの手順があります。被保険者が、適切なタイミングで手続きを進めることが大切です。

全体の流れは、次の5つの工程に分けられます。
- 医師の診察を受け、就業が困難であるという診断を得る
- 連続して 3日 間、症状が続く「待期」の状態になる
- 4日目以降、傷病手当金の支給対象となる
- 申請書の本人記入欄を記入し、会社と医師等にそれぞれの記入欄の作成を依頼する
- 加入している健康保険組合や協会けんぽへ書類を提出する
待期期間には、土日祝などの公休日や有給休暇も含まれます。ただし、連続して休む必要があるため、途中で出勤した場合は待期がリセットされる点に注意してください。
支給開始日から通算して 1年6か月 間、支給が受けられます。支給額は、標準報酬月額の平均を30で割った額に 3分の2 を掛けた金額が目安です。
支給開始日以前の被保険者期間が12か月未満の場合、計算には2つの標準報酬月額のうち低い額を用います。支給開始日が令和7年4月1日以降であれば、比較に用いる全被保険者の標準報酬月額の平均額は 320,000円 です。
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
退職後に、健康保険の資格を継続する任意継続を選んだ場合、新たに発生した病気やケガには傷病手当金は支給されません。ただし、退職前に受給要件を満たしていれば、継続給付を受けられる場合があります。
継続給付を受けるには、退職日までに続けて 1年 以上、被保険者である必要があります。また、退職日(資格喪失日の前日)に、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であることも条件です。
申請書をいつまでに提出するか
退職後に傷病手当金の支給を継続する場合、退職日までに続けて 1年 以上、被保険者であったことが条件の一つです。

この期間には、任意継続被保険者や共済組合の組合員、国民健康保険に加入していた期間は含まれません。ただし、加入している健康保険の種類によって細かな規定が異なる場合があります。
また、資格を失う前日に、現に傷病手当金を受けているか、あるいは受けられる状態であることも必要です。
支給を継続できるかどうかの条件を、表にまとめました。
| 項目 | 条件の内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 被保険者期間 | 退職日までに続けて 1年 以上 | 任意継続などは含まず |
| 支給の状態 | 資格喪失日の前日に支給を受けている、または受ける状態である | 要件を満たせば継続可能 |
(全国健康保険協会 公式サイト)
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
申請期限は、労務不能であった日ごとに時効が進行します。退職後に継続給付を受ける場合は、資格喪失後の手続きも並行して進める必要があります。
例えば、協会けんぽの任意継続被保険者になるには、退職日の翌日から 20日以内 に申し出なければなりません。この期限を過ぎると、任意継続の選択ができなくなるため注意が必要です。
傷病手当金の申請書は、支給対象となる期間ごとにまとめて提出するのが一般的です。ただし、医師の証明が必要なため、通院のタイミングに合わせて準備を進める手順がスムーズです。
申請書の提出先は、退職後の加入状況によって変わります。在職中は加入している保険者へ、退職後の継続給付は資格喪失前に加入していた保険者へ申請書を提出します。
任意継続被保険者としての資格は原則として 2年 間ですが、傷病手当金の継続給付に任意継続への加入は必要ありません。ただし、他の健康保険に加入した場合や、保険料を滞納した場合は資格を失います。
申請書の記入にあたっては、医師等による「療養のため仕事に就けなかったこと」についての意見が欠かせません。退職後の申請では、自身で保険者へ書類を送付する手間が発生するため、早めの準備が推奨されます。
また、退職後の保険料負担についても確認しておきましょう。協会けんぽの任意継続の場合、保険料は全額自己負担となります。都道府県によって保険料率は異なるため、自身の加入する支部の情報を確認してください。
立場によって変わる申請書の役割と進め方
傷病手当金の申請書には、本人、勤務先および療養担当者である医師等が記入する欄があります。申請の進め方は、現在の雇用形態や保険の加入状況によって異なります。

| いまの立場 | 傷病手当金の扱い | 次に見るところ |
|---|---|---|
| 正社員 | 在籍中の給付 | 会社への申請 |
| 契約社員 | 在籍中の給付 | 会社への申請 |
| パート・アルバイト | 在籍中の給付 | 会社への申請 |
| 休職中で在籍している人 | 在籍中の給付 | 会社への申請 |
| 退職して任意継続を選んだ人 | 継続給付の要件を確認 | 保険者への申請 |
| 退職して国民健康保険に入った人 | 継続給付の要件を確認 | 保険者への申請 |
| 家族の扶養に入った人 | 継続給付の要件を確認 | 保険者への申請 |
| 産前産後・育児休業の人 | 対象外 | 休業中の手当を確認 |
退職後に継続して給付を受けるには、資格喪失日の前日までに、継続して1年以上の被保険者期間が必要です。ただし、退職時に傷病手当金を受けているか受けられる状態にあり、退職後も労務不能の状態が続くことが条件となります。
退職後に新たに加入した国民健康保険での傷病手当金の扱いは、各市区町村や国保組合が定める条例や規約によります。加入先の窓口へ直接確認してください。
傷病手当金の支給額は、標準報酬月額の平均を30で割った額に、3分の2を掛けた金額が目安です。支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。
図は、支給の開始時期や期間の仕組みを示しています。
申請書には、医師が療養状況を記入する欄があります。申請のたびに医師の証明が必要になるため、通院のタイミングに合わせて準備を進める手順がスムーズです。
ただし、医師の診断内容によっては、証明が得られない場合もあります。
申請書の提出先は保険者です。在職中に勤務先を経由する場合は勤務先の窓口へ、退職後に継続給付を受ける場合は、資格喪失前に加入していた保険者へ提出します。
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
支給の条件となる待期期間の数え方
連続して休む必要がある日数について
傷病手当金を受け取るには、病気やケガによって仕事に就けない状態が、連続して 3日 続くことが要件の一つです。

この 3日 の期間は、土曜日や日曜日、祝日などの公休日、または有給休暇を使って休んでいる日も含めて数えます。
連続する 3日 間を過ぎた後の、4日目からが支給の対象となります。
ただし、待期期間中に一度でも仕事に就いた日があると、その時点で待期期間はリセットされます。改めて連続して 3日 間休む必要があります。
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
待期期間の数え方の例と注意点
例えば、月曜日から休み始め、土曜日まで連続して仕事に就けなかった場合、月曜日から水曜日までの 3日 が待期期間となります。
この例では、4日目にあたる木曜日からが支給の対象となる計算です。
待期期間のカウントにおいて、会社が定めている休日や、本人が取得した有給休暇の日数も、連続した休みとして含まれます。
もし、待期期間の途中で出勤したり、業務に従事したりした場合は、その翌日以降に改めて 3日 間の連続した休みが必要です。
支給対象となる日数は、待期期間を終えた後の日から、通算して 1年6か月 までとなります。
待期期間の判定は、医師の診断に基づき、実際に就業していないことが前提です。会社が定める休日であっても、病気により就業できない状態であればカウント可能です。
ただし、待期期間中に一部の業務のみを行った場合でも、それは「就業」とみなされ、待期期間がリセットされる可能性があります。判断に迷う場合は、事前に勤務先や保険者へ確認しましょう。
支給開始後の期間については、以前は暦日による計算でしたが、現在は支給開始日から通算して 1年6か月 で計算する方式となっています。
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
手続きがうまくいかないときの相談先
申請の手続きを進める中で、不明な点や困ったことが生じる場合があります。
状況によって、相談できる窓口は異なります。
会社とのやり取りで困っている場合
申請書の記入を会社に依頼している際、書類が戻ってこない、あるいは記入内容に納得がいかないといった問題が起こることがあります。
まずは勤務先の担当部署へ状況を確認してください。
会社が労働基準法に基づいた対応をしていないと感じるなら、労働基準監督署などの公的な機関へ相談することを検討してください。
ただし、個別の契約や交渉に関する問題は、弁護士でなければ扱えない用件が含まれることがあります。
公的な制度の利用について困っている場合
傷病手当金や雇用保険の受給について、制度の仕組みや申請方法がわからないときは、加入している保険者や管轄の窓口へ相談してください。
健康保険に関する具体的な内容は、加入している健康保険組合や協会けんぽへ問い合わせます。
支給要件や申請書の書き方、支給決定までの流れなどは、各保険者の窓口で確認できます。
参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)
雇用保険(失業手当などの給付を受けるための制度)の手続きや、離職後の手続きについて確認したいときは、管轄のハローワークへ相談してください。
受給できるかどうかなどの判断は、要件を満たしているかを確認したうえで、管轄のハローワークが行います。
参考:ハローワークインターネットサービス|雇用保険の具体的な手続き | 厚生労働省|厚生労働省
ただし、受給資格の有無は、離職日や被保険者期間などの条件によって決まります。
例えば、自己都合による退職の場合、原則として1か月の給付制限期間が発生します。
また、退職後の受給期間についても、原則として離職日の翌日から1年と定められています。
もし、妊娠や出産、育児などの理由で引き続き30日以上職業に就けない場合は、受給期間の加算が認められるケースもあります。
自身の状況がこれらに該当するかどうかは、ハローワークの窓口で詳細を確認してください。
傷病手当金に関するよくある勘違い
任意継続被保険者になれば、退職後も傷病手当金が受け取れますか
いいえ、任意継続被保険者になった後に新たに病気やけがをしても、傷病手当金は支給されません。
任意継続は、退職前の被保険者としての状態を維持するための制度だからです。
ただし、退職前から継続給付の要件を満たしている場合は、例外的に支給が続くことがあります。
退職後に国民健康保険に加入すると、傷病手当金の継続給付は受けられなくなりますか
いいえ、退職前から継続給付の要件を満たしている場合は、退職後に国民健康保険へ加入しても、元の健康保険者から給付を受け続けられることがあります。
支給の要件として、資格喪失日の前日までに続けて 1年 以上被保険者であったことなどが求められます。
傷病手当金の1日当たりの支給額は、原則として支給開始日前12か月の標準報酬月額の平均を30で割った額の3分の2です
はい、原則的な支給額の計算式はそのとおりです。
支給開始日前12か月の標準報酬月額の平均を30で割った「標準報酬日額」の 3分の2 が、1日当たりの支給額となります。
退職後に傷病手当金をもらうには、必ず弁護士に依頼する必要がありますか
いいえ、傷病手当金の申請は、要件を満たしていればご自身や勤務先を通じて行うことができます。
ただし、会社との間で金品の返還や未払い賃金などのトラブルが生じている場合は、弁護士へ相談することを検討してください。
会社との交渉や個別の権利に関する問題は、弁護士でなければ扱えない用件が含まれるためです。
まとめ
- 申請書には、本人が記入する欄と勤務先が記入する欄があります。
- 支給には、連続して3日間の待期期間を満たすことが必要です。
- 支給額は、標準報酬日額の3分の2が目安となります。
- 退職後に継続して受給するには、退職日までに被保険者期間が1年以上あるなどの条件があります。
- 退職後に国民健康保険へ加入しても、元の保険者から給付を受け続けられる場合があります。
支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月です。法定の支給要件や計算方法は共通ですが、健康保険組合独自の付加給付がある場合があります。
手続きの進め方や書類の書き方については、申請書類の解説もあわせて確認してください。
もし、会社とのやり取りで困ったことがあれば、お金のかからない相談先にまとめています。
手続きの前に、加入している保険者の最新情報を確かめてください。
この記事の根拠(本文内31か所・台帳9項目・一次資料6件)
制度の数値(台帳から出しています)
- 傷病手当金の待期期間(連続して休む必要がある日数)3日時点:2026-07確認:2026-07-26全国健康保険協会(協会けんぽ)|病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
- 傷病手当金の支給期間(通算)1年6か月時点:2026-07確認:2026-07-26全国健康保険協会(協会けんぽ)|病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
- 傷病手当金の支給割合(標準報酬日額に対する割合)3分の2時点:2026-07確認:2026-07-26全国健康保険協会(協会けんぽ)|病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
- 傷病手当金の計算に使う標準報酬月額の平均額(被保険者期間が12か月未満の場合の上限)320,000円時点:2026-07確認:2026-07-26全国健康保険協会(協会けんぽ)|病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
- 資格喪失後の継続給付に必要な被保険者期間(退職日までに続けて)1年時点:2026-07確認:2026-07-27全国健康保険協会(協会けんぽ)|病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|資格喪失後の継続給付について
- 任意継続の申出期限(退職日の翌日から)20日以内時点:2026-08確認:2026-08-14全国健康保険協会(協会けんぽ)|任意継続被保険者制度
- 任意継続被保険者でいられる期間2年時点:2026-07確認:2026-07-27全国健康保険協会(協会けんぽ)|任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)
- 自己都合の給付制限(原則)1か月時点:令和8年8月1日確認:2026-08-10厚生労働省|令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます
- 基本手当の受給期間(離職日の翌日から・原則)1年時点:2026-08確認:2026-08-19e-Gov法令検索(デジタル庁)|雇用保険法 第20条第1項第1号(支給の期間及び日数)
一次資料
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)|病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)|任意継続被保険者制度
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)|任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)
- 厚生労働省|ハローワークインターネットサービス|雇用保険の具体的な手続き | 厚生労働省
- 厚生労働省|令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます
- e-Gov法令検索(デジタル庁)|雇用保険法 第20条第1項第1号(支給の期間及び日数)
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