鬱病で休職する場合の制度と手続きの進め方

鬱病で休職する場合、どのような手続きが必要ですか

鬱病などの病気で働けなくなり、休職や退職を検討している方が、生活を守るために知っておくべき制度をまとめています。会社に在籍したまま休む場合と、退職して健康保険を継続する場合の、それぞれの動きを確認しましょう。

  • 休職中は傷病手当金を受け取れる可能性があります
  • 退職後は任意継続などの健康保険の選択が必要です
  • 手続きには、退職日から数えて決まった期限があります

最終更新: / 出典: 全国健康保険協会

鬱病で休職から退職するまでの流れ

鬱病などの症状で働けなくなったとき、休職から退職へ進む過程にはいくつかの段階があります。全体の流れを把握しておくことで、次に何をすべきかを見通しやすくなります。

一般的な流れは、次の5つの工程に分けられます。

  1. 医師の診断を受け、休職の手続きを行う
  2. 休職期間中に傷病手当金の申請を行う
  3. 退職の意思を会社に伝え、退職の手続きを進める
  4. 離職票などの書類を受け取り、ハローワークで雇用保険の手続きを行う
  5. 健康保険の継続方法を決める

まず、医師から診断書をもらい、会社へ休職の届け出を出します。このとき、会社の就業規則を確認しておくことが大切です。ただし、会社によって休職期間や手続きの細部は異なります。

休職中は、傷病手当金の受給を検討します。連続して3日を経て、要件を満たせば3分の2の割合で給付を受けられることがあります。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

次に、退職を決めた場合は会社へ伝えます。退職後の生活を守るために、離職票などの書類を早めに請求しておくとスムーズです。ただし、退職のタイミングや条件は個別の契約によります。

退職後、働ける状態なら失業保険を、働けない状態なら受給期間延長をハローワークで申請します。

参考:ハローワークインターネットサービス|雇用保険の具体的な手続き|厚生労働省

また、健康保険についても、任意継続にするか、国民健康保険に切り替えるかを判断する必要があります。任意継続を選択する場合、退職日の翌日から20日以内に申し出なければなりません。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

なお、傷病手当金の継続給付を受けたい場合は、退職日までに1年以上の被保険者期間が必要です。ただし、これ以外の条件も存在するため、詳細は窓口で確認してください。

手続きを進める際、状況によって以下のような例外や異なるケースが生じます。

1つ目は、雇用保険の給付制限です。自己都合による退職の場合、原則として1か月の制限がかかります。ただし、特定の条件を満たす場合は、この制限が解除されることがあります。

2つ目は、任意継続の加入期間です。任意継続ができる期間は2年ですが、途中で他の健康保険に加入した場合などは、その時点で資格を失います。

3つ目は、傷病手当金の支給期間です。支給は通算して1年6か月までとなります。ただし、支給開始日や加入している保険組合によって、細かな運用が異なる場合があります。

4つ目は、健康保険料の負担額です。任意継続の保険料は全額自己負担となります。ただし、退職時の標準報酬月額が320,000円を超える場合は、この上限額が適用されます。

手続きを忘れないための期限一覧

退職後の生活を支えるための手続きには、それぞれ期限があります。期限を過ぎると、希望していた制度を利用できなくなる可能性があるため注意が必要です。

主な手続きの期限目安をまとめました。ご自身の状況に合わせて、早めの確認が必要です。

主な手続きの期限目安
手続きの内容 期限の目安 備考
任意継続への加入 退職日の翌日から数えて20日以内 健康保険法に基づきます
傷病手当金の継続給付 資格を喪失する前日まで継続して受給していること 退職後の継続受給に関する要件です
離職票の請求 特段の期限の定めはありません 早めの請求がスムーズです

任意継続の手続きには、加入の申込み期限があります。退職日の翌日から数えて 20日以内 内に申し込む必要があります。郵送の場合は、この期間内に書類が必着するようにしてください。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

この期限を過ぎると、原則として任意継続を選ぶことができなくなります。また、任意継続の期間は2年ですが、他の健康保険の被保険者になった場合などは、途中で資格を失うことがあります。

傷病手当金の継続給付については、退職のタイミングが重要です。退職日に、傷病手当金を受けているか、受けられる状態であることが条件となります。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

継続給付を受けるには、資格喪失の日の前日までに続けて 1年 以上被保険者であったことなどの要件を満たす必要があります。

離職票などの書類については、会社へ請求してください。会社は、労働者が請求したときは、7日以内に賃金やその他の金品を返還する義務があります。

離職票は、会社が離職手続きを行った後、ハローワークが発行し、原則として会社経由で交付されます。

手続きを進める際、状況によって以下のような異なるケースが生じます。

まず、雇用保険の給付制限です。自己都合による退職の場合、原則として 1か月 の制限がかかります。ただし、教育訓練等を受ける場合など、特定の条件を満たすと解除されることがあります。

参考:雇用保険の具体的な手続き|厚生労働省

次に、任意継続の保険料です。保険料は全額自己負担となりますが、退職時の標準報酬月額が 320,000円 を超える場合は、この上限額が適用されます。

参考:【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について|全国健康保険協会(協会けんぽ)

また、傷病手当金の支給期間は、通算して 1年6か月 までです。ただし、加入している保険組合によって、細かな運用が異なる場合があります。

最後に、任意継続の加入期間です。原則として 2年 ですが、途中で他の健康保険の被保険者になった場合などは、その時点で資格を失います。

参考:任意継続被保険者制度|全国健康保険協会(協会けんぽ)

鬱病での休職期間と傷病手当金の仕組み

休職中に受け取れる傷病手当金の額や期間は、あらかじめ決まっています。支給を受けるための条件や、受け取れる期間の目安を整理しました。

会社に在籍しながら休む場合

病気で仕事ができない期間、健康保険から給付を受ける仕組みがあります。支給の条件には、連続して休む日数などの決まりがあります。

  • 連続して休む必要がある待期期間は 3日
  • 支給される金額は、標準報酬月額の 3分の2
  • 支給を受けられる期間は、通算して 1年6か月

在職中の傷病手当金には、受給資格について被保険者期間の最低要件はありません。また、給与が全額支払われている期間は、傷病手当金は支給されません。

休んだ3日のあと、4日目から支給されます1日目2日目3日目4日目から支給待期(3日)は支給されません。土日・祝日や有給休暇も入ります支給される期間通算1年6か月1日あたりの額標準報酬日額の3分の2
傷病手当金は、いつから・どれくらい出るか制度の適用時点:2026-07/確認日:2026-07-26/出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)

図から、支給が始まるタイミングや期間の考え方がわかります。

退職して保険を切り替える場合

退職して健康保険を切り替えると、傷病手当金の仕組みも変わります。退職後の生活を支えるための選択肢は、主に2つあります。

退職後に健康保険を継続する方法と、新しい保険に加入する方法です。どちらを選ぶかによって、受けられる給付や負担額が異なります。

退職後に傷病手当金の継続給付を受けるには、一定の条件を満たす必要があります。退職日までに続けて 1年 以上、被保険者であることが条件です。

また、退職日に、現に傷病手当金を受けているか、あるいは受けられる状態であることも必要です。国民健康保険への加入後も、要件を満たせば、この継続給付を受けられます。

継続給付の要件には例外もあります。例えば、退職日までに被保険者期間が 1年 に満たない場合は、継続して受け取ることができません。また、退職と同時に別の健康保険の被保険者になった場合も、継続給付は終了します。

さらに、退職日時点で傷病手当金の受給要件を満たしていない場合も、継続給付は受けられません。手続きの詳細は、加入している健康保険組合や、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

退職後の健康保険料を抑えるための知識

退職後に健康保険を継続する場合、保険料の負担額は選択する制度によって変わります。
特に、任意継続(退職後も現在の健康保険を継続して利用できる仕組み)を選ぶ際は、負担額の計算方法に注意が必要です。

任意継続の保険料は、原則として本人が全額を負担します。
在籍中のように会社が半分を負担することはありません。
そのため、退職前よりも保険料が高くなるケースがあります。

ただし、保険料の計算に使われる「標準報酬月額(給与額に基づいた等級)」には上限があります。
退職時の給与が高い人は、上限によって保険料が抑えられる場合があります。

任意継続の保険料に関する仕組み
項目 内容 備考
負担の割合 本人が全額を負担 会社負担はありません
標準報酬月額の上限 320,000円 退職時より安くなる場合があります
東京都の保険料率 10.08% 東京支部の例(令和8年4月分〜)

保険料率は都道府県ごとに定められています。
上記の数値は、東京都の協会けんぽにおける令和8年4月分からの例です。
お住まいの地域によって異なるため、事前の確認が要ります。

また、40歳から64歳までの人は、介護保険料率も加算されます。
毎年度、上限額などの基準が見直されるため、手続きの際には最新の情報をご確認ください。

任意継続を検討する際は、以下の点にも留意してください。
手続きの期限や、途中で資格を失う例外的なケースがあります。

  • 申出の期限:退職日の翌日から20日以内に手続きが必要です。郵送の場合は必着となるため注意してください。
  • 継続できる期間:原則として2年間です。ただし、他の健康保険に加入した場合などは途中で資格を失います。
  • 保険料の滞納:保険料を納付期限までに納めなかった場合、任意継続の資格を失うことがあります。
  • 保険料率の地域差:保険料率は都道府県で異なります。例えば、新潟県は9.21%と低めですが、佐賀県は10.55%と高くなっています。

令和8年4月分からは、全国一律で0.23%の子ども・子育て支援金率もあわせて徴収されます。
ご自身の負担額を正確に把握するため、加入先の最新情報を確認しましょう。

参考:【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について|全国健康保険協会(協会けんぽ)


参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)の任意継続被保険者の方の保険料額(令和8年4月分〜・東京支部)|全国健康保険協会(協会けんぽ)


参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

なお、任意継続の資格を失うケースには、以下のようなものがあります。

  • 他の保険への加入:家族の扶養に入る、あるいは就職して新しい健康保険に加入した場合です。
  • 保険料の未納:定められた納付期限までに保険料を納めなかった場合、資格を失うことがあります。
  • 本人の申し出:任意継続を終了したいと本人が申し出た場合も、資格は終了します。

参考:任意継続被保険者制度|全国健康保険協会(協会けんぽ)

手続きがうまくいかないときの相談先

手続きを進める中で、判断に迷ったり、会社とのやり取りで困ったりすることがあります。
状況によって、相談できる窓口は異なります。

会社とのやり取りや、休職・退職の手続きに関する場合

休職中の給与や、退職に伴う書類の受け取りについて困ったときは、まずは勤務先の担当部署へ確認してください。
ただし、会社が対応を拒むなどのトラブルがある場合は、別の窓口を検討する必要があります。

金品の返還や離職票の交付について会社と争いがある場合は、労働基準監督署などの公的な窓口に相談できます。
労働基準監督署は、労働条件の基準が守られているかを監督する機関です。

なお、会社との交渉が必要な事案については、弁護士でなければ扱えない用件があります。
交渉する権限があるのは弁護士のみであるため、法的な解決を求める場合は、弁護士への相談を検討してください。

失業保険や雇用保険の手続きに関する場合

雇用保険(失業手当などの給付を受けるための制度)の手続きや、受給に関する相談は、管轄のハローワークで行えます。
離職票の交付や、受給できる条件の判定については、ハローワークが判断します。

参考:ハローワークインターネットサービス|雇用保険の具体的な手続き|厚生労働省

手続きの進め方や、受給に関する不明な点は、お住まいの地域を管轄するハローワークの窓口で確認してください。
窓口では、現在の状況に基づいた具体的な案内を受けることができます。

ただし、自己都合による退職の場合、原則として 1か月 の給付制限期間があります。

参考:令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます|厚生労働省

例外として、特定の条件を満たす場合は、給付制限が解除されるケースもあります。
受給条件の判定は個別の状況により異なるため、詳細はハローワークへ直接確認してください。

例えば、離職理由が「正当な理由のある自己都合」と認められる場合などは、制限を受けない可能性があります。
また、特定の教育訓練を受ける場合など、制度改正に伴い条件が緩和されるケースもあります。

受給にあたっては、離職票に記載された離職理由が、自身の認識と一致しているかもあわせて確認しましょう。
もし記載内容に誤りがある場合は、ハローワークの窓口で相談してください。

鬱病の休職と保険に関するよくある勘違い

休職して給与が支払われない間、社会保険料の支払いは止まりますか

いいえ、休職中も健康保険と厚生年金の資格は継続するため、保険料の支払いは止まりません。
保険料の負担割合は、在籍中と同様に会社と本人が半分ずつです。


参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

給与から差し引けない場合は、会社から請求される本人負担分を、別途振込などで支払う必要があります。
ただし、会社によって徴収の手順が異なるため、事前に担当部署へ確認してください。

傷病手当金を受け取っていれば、社会保険料は払わなくていいですか

いいえ、傷病手当金を受け取っていても、社会保険料の支払い義務は免除されません。
傷病手当金は、病気等で働けない期間の生活を支えるための給付であり、保険料の負担とは別の仕組みです。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

退職して任意継続を選んだ場合、保険料は在籍中と同じ金額ですか

いいえ、退職して任意継続を選ぶと、保険料は全額が本人の負担になります。
会社が半分を負担する仕組みではなくなるため、在籍中よりも負担額が増えるケースがあります。

参考:任意継続被保険者制度|全国健康保険協会(協会けんぽ)

ただし、退職時の標準報酬月額が 320,000円 を超える場合は、この上限額が適用されます。

参考:【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について|全国健康保険協会(協会けんぽ)

退職後に健康保険を切り替える際、手続きを忘れても後から加入できますか

いいえ、協会けんぽの任意継続制度を利用するには、申込みの期限があります。
退職日の翌日から 20日以内 に資格取得申出書を提出しなければなりません。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

郵送の場合は、期限内に資格取得申出書が住所地を管轄する協会けんぽ支部へ必着する必要があります。
期限を過ぎると、希望していた制度を利用できなくなるため、退職後すぐに確認してください。

まとめ

これまでの内容を整理しました。ご自身の状況と照らし合わせて、確認の材料にしてください。

  • 休職から退職へ進む過程には、いくつかの段階があります。
  • 退職後の生活を支える手続きには、それぞれ期限があります。
  • 傷病手当金は、働けない期間の生活を支えるための給付です。
  • 傷病手当金を受け取っていても、社会保険料の支払い義務はなくなりません。
  • 任意継続を選ぶと、保険料は全額が本人の負担になります。
  • 手続きの締切は退職日の翌日から数えるため、早めの確認が必要です。

特に、協会けんぽの任意継続制度を利用する場合は、退職日の翌日から 20日以内に申し出る必要があります 。この期限を過ぎると、希望していた制度を利用できなくなるため注意してください。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会

また、傷病手当金の継続給付を受けるには、退職日までに続けて 1年 以上の被保険者期間が必要です 。ただし、退職時にすでに傷病手当金を受けている、または受けられる状態であることも条件となります。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会

手続きの進め方や、制度の詳しい仕組みについては、健康保険のガイド傷病手当金の解説もあわせて活用してください。

この記事の根拠(本文内35か所・台帳12項目・一次資料9件)

制度の数値(台帳から出しています)

一次資料

数値は一次情報で確かめてから台帳に入れています(情報源について)。リンク先の内容が変わっているのを見つけたら訂正の受付までお知らせください。

この記事の編集責任者

JPSM INTERNET SERVICE 代表

小笠原 治輝おがさわら はるき

休職から退職までの手続きを自分で経験しました。傷病手当金の申請、雇用保険の受給期間延長、健康保険と年金の切り替えを実際に進めた経験があります。記事は、厚生労働省・e-Gov法令検索・ハローワークの一次情報と突き合わせて確認しています。