iDeCoと退職金のシミュレーション

iDeCoと退職金の合計額をシミュレーションする方法

退職後の資産を予測するために、iDeCoの積立額と会社の退職金を合わせたシミュレーションを行うことは有効です。この記事では、退職金の平均額や計算の考え方、受け取りの仕組みについて解説します。

  • 退職金の平均額は学歴や退職理由によって異なります
  • 退職金制度がある企業の割合は企業規模によって異なります
  • iDeCoと退職金はそれぞれ別の仕組みで運用されます

最終更新: / 出典: 厚生労働省

iDeCoと退職金の合計額をシミュレーションする計算式

将来受け取るお金の目安を知るには、iDeCo(個人型確定拠出年金)の積立見込額と、会社から支払われる退職金の合計を計算します。

計算式は、以下の通りです。

「iDeCoの受取見込額」+「退職金の受取見込額」=「将来の合計額」

退職金の額は、学歴や退職の理由によって異なります。厚生労働省の調査による、退職給付額の平均は以下の通りです。

学歴・職種・退職理由別の退職給付額の平均
学歴・職種 退職理由 平均額
大学・大学院卒(管理・事務・技術職) 定年 18,960,000円
大学・大学院卒(管理・事務・技術職) 会社都合 17,380,000円
大学・大学院卒(管理・事務・技術職) 自己都合 14,410,000円
大学・大学院卒(管理・事務・技術職) 早期優遇 22,660,000円
高校卒(管理・事務・技術職) 定年 16,820,000円
高校卒(管理・事務・技術職) 会社都合 13,850,000円
高校卒(管理・事務・技術職) 自己都合 12,800,000円
高校卒(管理・事務・技術職) 早期優遇 24,320,000円
高校卒(現業職) 定年 11,830,000円
高校卒(現業職) 会社都合 7,370,000円
高校卒(現業職) 自己都合 9,210,000円
高校卒(現業職) 早期優遇 21,460,000円

(もとにした一次情報:令和5年就労条件総合調査 結果の概況、厚生労働省)

早期優遇(青緑)がどの学歴でも最高定年大学卒1,896万円高卒・事務1,682万円高卒・現業1,183万円会社の都合大学卒1,738万円高卒・事務1,385万円高卒・現業737万円自分の都合大学卒1,441万円高卒・事務1,280万円高卒・現業921万円早期優遇大学卒2,266万円高卒・事務2,432万円高卒・現業2,146万円
学歴と辞め方で違う退職給付額の平均制度の適用時点:令和5年調査(令和4年1年間)/確認日:2026-07-26/出典:厚生労働省

図は、学歴や退職の形態によって、受け取れる退職金の平均額に差があることを示しています。

ただし、この数値は勤続20年以上かつ45歳以上の退職者に限ったデータです。

また、退職金制度の有無は企業の規模によっても異なります。

従業員1,000人以上の企業では90.1%に制度がありますが、30〜99人の企業では70.1%となります。

退職金の支給条件は、各企業の就業規則や退職金規程によって定められています。

制度の有無や支給額の基準は、勤務先の規模や職種、勤続年数によって大きく変動します。

具体的な計算例を見てみましょう。

大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で、定年退職する場合を想定します。

iDeCoの受取見込額が500万円の場合、計算式は500万円+18,960,000円となります。

18,960,000円は、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)の定年退職者の平均退職給付額です。

シミュレーションを行う際は、自身の現在の職種や、想定する退職理由を確認してください。

退職理由が「自己都合」か「会社都合」かによっても、受け取れる額は大きく変わります。

また、一時金として受け取るか、年金形式で受け取るかによっても、税金の扱いが異なります。

参考:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

計算に使う「退職給付」や「平均額」の意味

シミュレーションを行う際、計算の基礎となる言葉の意味を整理しておきましょう。言葉の定義を正しく理解すると、計算結果の捉え方が変わります。

退職給付制度があるかどうか

退職給付(会社から退職時に支払われるお金の仕組み)があるかどうかは、勤務先の規模によって傾向が異なります。退職金は法律上の義務ではありません。

ただし、就業規則や退職金規程に定めがあれば、会社は支払う義務が生じます。制度の有無は、自身の勤務先の規定を確認してください。

退職給付制度がある企業の割合(令和5年)
企業の規模(従業員数) 制度がある割合
1,000人以上 90.1%
300〜999人 88.8%
100〜299人 84.7%
30〜99人 70.1%

(もとにした一次情報:令和5年就労条件総合調査 結果の概況、厚生労働省)

表からわかるように、企業の規模が大きくなるほど、退職給付制度が整っている傾向が見られます。制度全体の割合は74.9%です。

計算に用いる「平均額」の考え方

シミュレーションで使う「平均額」は、あくまで統計上の数値です。個人の受取額は、勤続年数や役職、給与水準によって大きく変動します。

例えば、同じ学歴でも退職の形態によって、受取額の平均には差が生じます。自己都合退職か、会社都合や定年退職かによっても、金額は異なります。

統計データにおける退職給付額の平均は、一時金と年金現価額の合計を指します。ただし、この数値は勤続20年以上かつ45歳以上の退職者に限ったデータである点に注意が必要です。

すべての層にそのまま当てはまるわけではありません。自身の年齢や勤続年数が条件を満たさない場合は、目安として活用してください。

より実態に近い予測を行うには、自身の会社の就業規則を確認しましょう。これまでの給与実績や、会社独自の退職金算定式をもとに計算することが重要です。

制度の詳細や計算方法が不明な場合は、勤務先の総務部門や人事担当窓口へ問い合わせることで、正確な情報を得られます。

退職金の種類が「一時金のみ」か「年金併用」かによっても、受取時の税負担が変わるため注意しましょう。

参考:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

退職金の金額が変わる条件と企業の制度割合

退職金の受取額は、勤務先の制度内容によって大きく変わります。退職金は法律で支払いが義務付けられたものではありません。就業規則や退職金規程の定めに従って支払われます。

制度には、退職時にまとめて受け取る「一時金」と、分割で受け取る「年金」があります。これらを組み合わせる仕組みや、受け取り方の選択肢も企業によって異なります。

厚生労働省の調査によると、退職給付(一時金や年金などの仕組み)制度がある企業の割合は 74.9% です。

参考:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

退職給付制度がある企業の割合(令和5年)
企業の規模(従業員数) 制度がある割合
1,000人以上 90.1%
300〜999人 88.8%
100〜299人 84.7%
30〜99人 70.1%

(もとにした一次情報:令和5年就労条件総合調査 結果の概況、厚生労働省)

個人の受取額を予測するには、ご自身の会社の就業規則を確認することが重要です。勤続年数や役職、これまでの給与水準によって、算出される金額は変動します。

また、退職の理由によっても金額が変わる場合があります。自己都合退職か、定年や会社都合による退職かによって、支給額に差が設けられているケースも少なくありません。

ただし、すべての企業が理由による差を設けているわけではありません。

さらに、退職金の計算式には「基本給」や「退職割増金」などが含まれることがあります。これらは企業ごとに独自のルールがあるため、必ず社内の規定を確認してください。

具体的な金額の算出方法を知りたい場合は、人事部や総務部などの窓口へ問い合わせましょう。規程の確認方法や、具体的な計算手順についても、あわせて確認しておくとよいでしょう。

退職金制度の有無や種類は、会社によって大きく異なります。

制度の確認にあたっては、以下の項目をチェックするとスムーズです。まず、退職金の計算根拠となる「算定基礎」が何であるかを確認します。次に、退職理由による「減額規定」の有無を把握しましょう。

加えて、一時金として受け取るのか、年金形式で受け取るのかといった「受取方法」の選択肢も重要です。会社によっては、特定の条件を満たさないと選択できない場合もあります。

あらかじめ制度の全体像を把握しておきましょう。

もし、就業規則の読み方がわからない場合は、担当部署に「退職金の計算式が記載されている箇所」を尋ねるのが確実です。不明な点は、早めに確認しておくことで、将来の資金計画が立てやすくなります。

退職金やiDeCoが振り込まれる時期と手順

退職金やiDeCoは、受け取る仕組みが異なります。それぞれの支払いの流れを整理しました。

勤務先から退職金を受け取る場合

退職金は、勤務先の規定に従って支払われます。退職後に会社から手続きの案内があるのが一般的です。

支払いの時期は、退職日から数か月かかる場合があります。就業規則や退職金規程を確認して、いつ頃振り込まれる予定か把握しておくと安心です。

退職時に会社から支払われる金品については、労働基準法で定められたルールがあります。

使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。 前項の賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。

引用:労働基準法 第23条(e-Gov法令検索)

ただし、退職金の具体的な支払時期については、個別の就業規則の定めに従うことが一般的です。

退職金の有無や支給ルールは企業ごとに異なります。制度の有無については、こちらの記事を参照してください。

参考:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

iDeCoの資産を受け取る場合

iDeCo(個人型確定拠出年金)の老齢給付金は、原則60歳以降、受給可能年齢に達してから自身で請求手続きを行います。退職しただけで受取案内が届くものではなく、受給可能年齢に達した際に運営管理機関から案内が届きます。

受け取り方は、一時金としてまとめて受け取る方法や、年金として分割で受け取る方法などがあります。ご自身の希望に合わせて、金融機関へ書類を提出して申請します。

申請から実際の入金までは、書類の審査や手続きの期間を要します。余裕を持って手続きを進めることが大切です。

なお、iDeCoの受給可能年齢は通算加入者等期間などで決まり、受取方法や手続きの詳細は運営管理機関によって異なる場合があります。

受取方法の選択によって、税金の計算方法が変わる点にも注意が必要です。具体的な手続きについては、加入中の金融機関の窓口や公式サイトで確認しましょう。

また、iDeCoの受取手続きは、加入している金融機関(運営管理機関)へ直接行う必要があります。書類の不備があると、入金までに想定以上の時間がかかるケースもあります。

受取方法には一時金または年金があり、運営管理機関によっては両者の併用も選択できます。どの方法を選ぶかによって、将来のキャッシュフローや税負担が変動するため、慎重な検討が求められます。

手続きの際は、郵送による書類のやり取りが発生することが多いため、連絡先情報の変更などがないか、あらかじめ確認しておくとスムーズです。

iDeCoと退職金に関するよくある勘違い

iDeCoの資産は、退職金と一緒にまとめて受け取れますか

いいえ、iDeCoの資産と会社の退職金は、別々の仕組みで管理されています。iDeCoは加入している金融機関へ自身で申請を行う必要があります。

一方、会社の退職金は勤務先の規定に従って支払われます。受取時期や方法は、各制度のルールによって異なります。

退職金制度の有無は企業の規模により異なりますが、従業員1,000人以上の企業では90.1%の割合で制度が存在します。

参考:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

退職金を受け取ると、iDeCoの受取額が減ることはありますか

いいえ、退職金の受取額によってiDeCoの資産額が直接減ることはありません。ただし、税金の計算において注意が必要です。

両方を同じ年に受け取る場合、退職所得控除の適用方法が影響し、税負担が変わる可能性があります。受け取り時期の検討が重要です。

例えば、一時金として受け取る際は、退職所得控除の枠を両方の制度で共有することになるため、税額のシミュレーションが推奨されます。

iDeCoの運用益には、所得税や住民税がかかりませんか

iDeCoの制度内で生じた運用益は非課税ですが、給付を受け取るときは受取方法に応じて課税対象になります。一時金として受け取る場合は、退職所得として課税対象になります。

年金として受け取る場合は、公的年金等控除の対象となる雑所得として扱われます。受取方法により税制上の扱いが異なる点に注意しましょう。

受取方法の選択は、将来の所得状況や他の年金との兼ね合いで判断する必要があります。ただし、制度改正により税制が変わる可能性もあります。

退職金から住民税が引かれるのは、退職した翌年ですか

いいえ、退職所得に係る住民税は、原則として退職金の支払時に特別徴収されます。支払額から退職所得控除などを差し引いて計算されます。

給与から天引きされる仕組みとは異なるため、手取り額の確認が必要です。ただし、自治体や支払条件により詳細が異なる場合があります。

住民税の徴収方法は、勤務先が退職金から直接差し引く形が一般的です。手取り額を把握するには、事前に控除額を想定しておくことが望ましいです。

まとめ

将来の備えを考えるうえで、iDeCoと退職金の合計額を把握することは大切です。これまでの内容を整理します。

  • 将来の合計額は、iDeCoの受取見込額と退職金の受取見込額を足して考えます。
  • 退職金の額は、勤務先の制度や就業規則の定めに従って決まります。
  • iDeCoの資産と会社の退職金は、管理の仕組みが異なります。
  • iDeCoの資産は、自身で金融機関へ申請を行う必要があります。
  • 退職金とiDeCoを同じ時期に受け取る場合、税金の計算に影響することがあります。
  • 退職所得に係る住民税は、原則として退職金の支払時に特別徴収されます。

制度の改正により、加入対象やルールが変更される場合があります。将来的に制度の対象外となっている方も、改正によって対象となる可能性があるため、継続的な確認が推奨されます。

具体的な受取額のシミュレーションを行いたい方は、退職金シミュレーションも活用してください。税金の仕組みについては、税金の解説ページにまとめています。

ただし、個別の税務判断については、税務署や税理士などの専門家へ相談してください。

この記事の根拠(本文内39か所・台帳17項目・一次資料1件)

制度の数値(台帳から出しています)

一次資料

数値は一次情報で確かめてから台帳に入れています(情報源について)。リンク先の内容が変わっているのを見つけたら訂正の受付までお知らせください。

この記事の編集責任者

JPSM INTERNET SERVICE 代表

小笠原 治輝おがさわら はるき

休職から退職までの手続きを自分で経験しました。傷病手当金の申請、雇用保険の受給期間延長、健康保険と年金の切り替えを実際に進めた経験があります。記事は、厚生労働省・e-Gov法令検索・ハローワークの一次情報と突き合わせて確認しています。