休職命令を受けたときの制度と手続き

休職命令を受けたあとの手続きと生活を守る方法

会社から休職命令を受けた方は、休職中の給与や健康保険、退職後の生活費をどう確保するかを考える必要があります。この記事では、傷病手当金の受給条件や、退職後に健康保険を継続する場合の保険料の仕組み、手続きの期限について解説します。

  • 休職中の生活を支える傷病手当金の仕組みがある
  • 退職後の健康保険は任意継続などの選択肢がある
  • 手続きには退職後20日以内などの期限がある

最終更新: / 出典: 全国健康保険協会(協会けんぽ)

休職命令を受けたあとの手続きの流れ

休職命令を受けたあとの手続きは、会社とのやり取りと、公的な制度への申請の2つに分かれます。状況によって進む順番は変わりますが、一般的な流れを整理しました。

1. 休職期間と条件の確認

まずは会社から、休職の期間や給与の扱いについて説明を受けます。休職期間中に社会保険料をどう支払うかについても、事前の確認が要ります。

就業規則により、休職中の給与の有無や、復職に向けた条件が定められています。会社から提示された休職期間が、自身の病状や医師の判断と整合しているかも確認しましょう。

2. 医師の診断書による手続き

会社から診断書の提出を求められた場合は、医師に依頼して作成してもらいます。診断書は、休職の理由を証明するために必要となる書類です。

診断書には、病名だけでなく「就業が困難である理由」や「休養が必要な期間」が記載されている必要があります。会社指定の書式がある場合は、あらかじめ医師へ伝えておきましょう。

3. 傷病手当金の申請準備

給与が出ない期間の生活を支えるために、傷病手当金の受給を検討します。連続して3日間の待期期間を満たす必要があります。ただし、待期には土日祝などの公休日・有給休暇も含まれます。

支給される額は、標準報酬月額の平均の3分の2が目安です。支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月となります。

なお、退職後に継続して受給するには、退職日までに被保険者期間が1年以上あるなどの条件を満たす必要があります。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

4. 社会保険料の支払い方法の決定

休職中も健康保険と厚生年金の資格は継続します。厚生年金保険料は18.3%ですが、休職中も原則として本人負担分を会社へ支払う必要があります。

保険料の徴収方法について、会社と決めておきましょう。給与から天引きできない場合は、会社が指定する口座への振込など、個別の支払い手続きが必要になる場合があります。

5. 退職を見据えた準備

もし退職を選択する場合は、健康保険の任意継続などの手続きが必要です。協会けんぽの場合、退職日の翌日から20日以内に申し出る必要があります。ただし、この期限を過ぎると任意継続は選べなくなります。

参考:任意継続被保険者制度|全国健康保険協会(協会けんぽ)

任意継続で加入できる期間は、原則として2年です。ただし、他の健康保険に加入した場合などは、途中で資格を失うことがあります。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

保険料の負担額は、退職時の標準報酬月額や、協会けんぽが定める上限額320,000円によって決まります。退職前に、自身の状況でどちらの制度が有利か確認しておきましょう。

参考:【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について|全国健康保険協会(協会けんぽ)

手続きの詳細は、お勤め先の担当部署や、加入している保険者へ相談してください。

手続きを忘れないための期限一覧

休職から退職へ進む場合、手続きには期限があります。期限を過ぎると、希望していた制度を利用できなくなる可能性があるため注意が必要です。

主な手続きの期限をまとめました。ご自身の状況に合わせて、早めの確認が必要です。ただし、個別の事情により異なる場合がある点にご留意ください。

主な手続きの期限
手続きの内容 期限の目安 備考
任意継続の申出 20日以内 退職日の翌日から数えます
傷病手当金の継続給付 資格喪失の日の前日まで 受給中の状態を維持する必要があります
雇用保険の基本手当 離職した翌日から1年以内 受給には待期期間があります
その他の公的手続き 状況により異なります 管轄の窓口へ確認してください

健康保険の任意継続の申出は、退職日の翌日から20日以内に行う必要があります。

参考:任意継続被保険者制度|全国健康保険協会(協会けんぽ)

郵送で手続きをする場合は、この期間内に書類が相手方に届いている状態にする必要があります。20日目が土日や祝日の場合は、その翌営業日までが期限となります。

任意継続ができる期間は、原則として2年です。ただし、他の健康保険に加入した場合や、保険料を滞納したときなどは、途中で資格を失います。

傷病手当金の継続給付を受けるには、退職日までに被保険者期間が1年以上あることが条件の一つです。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

また、資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であることも求められます。退職後の受給継続については、事前に加入中の保険者へ確認しましょう。

雇用保険の基本手当(失業保険)の手続きは、管轄のハローワークで行います。

参考:雇用保険の具体的な手続き|厚生労働省

自己都合による退職の場合、原則として1か月の給付制限期間が発生することがあります。ただし、一定の条件を満たすことで制限が解除される例外もあります。

手続きのタイミングや必要書類は、離職理由や状況によって細かく分かれます。正確な情報は、お住まいの地域を管轄するハローワークの窓口で直接確認してください。

立場によって変わる休職中の扱い

休職中や退職後の扱いは、現在の雇用形態や利用する保険制度によって異なります。
社会保険料の負担割合や、給付を受けられる条件が立場ごとに変わるためです。

ご自身の状況が、以下の表のどこに当てはまるかを確認してください。
次に確認すべき事項もあわせてまとめています。

立場別の扱いと確認事項
現在の立場 社会保険の扱い 次に見るところ
正社員・契約社員 会社の健康保険・厚生年金 休職中の給与と保険料
パート・アルバイト 会社の健康保険・厚生年金 加入条件と保険料
休職中で在籍している人 会社の健康保険・厚生年金 保険料の支払い方法
退職して任意継続を選んだ人 任意継続被保険者 保険料の全額負担
退職して国民健康保険に入った人 国民健康保険 市区町村の窓口
家族の扶養に入った人 家族の健康保険 扶養の認定条件
産前産後・育児休業の人 会社の健康保険・厚生年金 保険料の免除制度
退職して雇用保険の手続きをする人 雇用保険 失業給付の要件

(もとにした一次情報と確認日:2026-08-23)

在籍したまま休職している間は、社会保険の資格は継続します。
保険料は、給与の有無にかかわらず、会社と本人が半分ずつ負担する仕組みです。

厚生年金保険料率は 18.3% です。
これも会社と本人が折半して負担します。

退職して任意継続を選ぶと、会社負担がなくなります。
保険料は、これまでの負担額の約2倍、つまり全額が本人の負担になります。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

任意継続の保険料は、都道府県によって異なります。
例えば東京都の場合、令和8年度の保険料率は 10.08% です。
ただし、40歳から64歳の方は介護保険料率も加算されます。

任意継続の標準報酬月額には上限があります。
令和8年度の協会けんぽにおける上限は 320,000円 です。
退職時の月額がこれを超える場合は、上限額で計算されます。

参考:【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について|全国健康保険協会(協会けんぽ)

任意継続を希望する場合は、退職日の翌日から 20日以内 に申し出る必要があります。
期限を過ぎると、この制度を利用できなくなるため注意が必要です。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

退職後の保険料が高くなりすぎないための確認

退職後に任意継続を選ぶ場合、保険料の負担額がいくらになるかを事前に把握しておくことが大切です。
制度によって計算の仕組みが異なるため、ご自身の状況に合わせて確認を進めてください。

任意継続の保険料が下がるケース

退職時の給与額によっては、任意継続の保険料が以前より安くなることがあります。
標準報酬月額(社会保険料を計算するための基準となる月額)には、上限が設けられているためです。

  • 任意継続被保険者の標準報酬月額の上限(協会けんぽ・令和8年度)は 320,000円 です。

退職時の標準報酬月額がこの数値を超える人は、この上限で頭打ちになります。
そのため、退職後の保険料が以前より安くなるケースが見られます。

ただし、上限額は毎年度見直されるため、必ず最新の情報で再確認してください。

参考:【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について|全国健康保険協会(協会けんぽ)

任意継続の保険料を計算する際の注意点

任意継続は、会社負担がなくなるため、保険料の全額を自分で納める必要があります。
東京都に住んでいる場合、保険料率は以下のようになります。

  • 任意継続の保険料率(協会けんぽ 東京支部・令和8年4月分から)は 10.08% です。

この率は、健康保険料率と子ども・子育て支援金率の合計です。
40歳から64歳までの人は、これに介護保険料率も加わります。

参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)の任意継続被保険者の方の保険料額(令和8年4月分〜・東京支部)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

保険料率は都道府県によって異なるため、注意が必要です。
例えば、協会けんぽの令和8年度の保険料率(全国平均)は 9.90% ですが、これは労使折半の数値です。

任意継続の場合は、この折半分も含めた全額を自己負担することになります。

また、任意継続を希望する場合は、手続きの期限にも気を配りましょう。
協会けんぽの任意継続被保険者になるには、退職日の翌日から 20日以内に申し出が必要です。

この期限を過ぎると、任意継続を選択できなくなるため、退職後にいち早く確認すべき事項といえます。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

傷病手当金を受け取るための条件

傷病手当金は、病気やケガで仕事ができない期間の生活を支えるための制度です。
要件を満たせば、一定の期間、給付を受けることができます。

受給のタイミングに関する条件

給付を受けるには、連続して休む日数に一定のルールがあります。
まずは、以下の条件を確認してください。

  • 連続して3日の待期期間(連続して休む必要がある日数)を経過すること
  • 支給開始日から通算して1年6か月の間であること

待期期間には、土日祝などの公休日や有給休暇も含まれます。
ただし、途中で出勤した場合はカウントがリセットされるため注意が必要です。

支給額は、標準報酬月額の平均を30で割った額に3分の2を掛けて算出します。
待期期間の終了後、最初に傷病手当金が支給された日が支給開始日です。

休んだ3日のあと、4日目から支給されます1日目2日目3日目4日目から支給待期(3日)は支給されません。土日・祝日や有給休暇も入ります支給される期間通算1年6か月1日あたりの額標準報酬日額の3分の2
傷病手当金は、いつから・どれくらい出るか制度の適用時点:2026-07/確認日:2026-07-26/出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)

図を見ると、支給が始まるまでの流れがわかります。

受給の対象となる状況に関する条件

傷病手当金は、療養のために労務に服することができない状態であるときに支給されます。
働けるかどうかの判定は、診てもらっている医師の意見をもとに行われます。

支給を受けるには、健康保険の被保険者であることが前提です。
退職後に継続して受け取るには、資格喪失日の前日までに続けて1年以上の被保険者期間が必要です。

また、退職時にすでに傷病手当金を受けているか、受けられる状態であることも条件となります。
退職後に国民健康保険へ加入しても、在職中の健康保険で継続給付の要件を満たせば対象となります。

支給額の計算において、被保険者期間が12か月未満の場合は、
320,000円を上限として計算されることがあります。
年度替わりで見直されるため、最新の基準を確認しましょう。

もし、ご自身の状況が要件に当てはまるか判断に迷う場合は、
加入している健康保険の窓口へ相談してください。
保険者によって、具体的な確認方法や申請の手順が異なります。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

手続きがうまくいかないときの相談先

手続きを進める中で、判断に迷う場面が出てくるかもしれません。
制度の要件や、ご自身の状況が当てはまるかどうかは、窓口によって相談できる内容が異なります。

会社に相談しても、傷病手当金の受給条件を教えてもらえませんか?

会社は受給の可否を判定する権限を持っていません。
支給要件を満たしているかは、加入している健康保険の保険者が判断します。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

具体的な条件については、健康保険組合や協会けんぽなどの保険者へ相談してください。
ただし、医師の診断書や欠勤状況の確認など、会社側の協力が必要な場合もあります。

退職後の手続きについて、ハローワークで相談できますか?

ハローワークは雇用保険に関する手続きを行う場所です。
失業手当などの相談はできますが、健康保険や年金の相談はできません。

参考:雇用保険の具体的な手続き|ハローワークインターネットサービス|雇用保険の具体的な手続き | 厚生労働省

社会保険の仕組みについては、市区町村の窓口や健康保険組合へ相談してください。
なお、教育訓練を受ける場合など、雇用保険の給付制限が解除される例外もあります。

参考:令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます|厚生労働省

会社との間で、給付金や未払い金についてトラブルになりました。弁護士に相談すべきですか?

交渉が必要な事案の内容によっては、弁護士でなければ扱えない用件があります。
会社とのやり取りにおいて、法的な解決を求める場合は弁護士へ相談してください。

ただし、ここでは弁護士が行うべき業務については扱っていません。
労働基準監督署などの行政機関が相談を受け付けているケースもあります。

任意継続の手続き期限を過ぎてしまった場合はどうなりますか?

協会けんぽなどの任意継続制度を利用するには、退職日の翌日から20日以内以内の申出が必要です。ただし、正当な理由があると保険者が認めたときは、この期限を過ぎた申し出が認められる場合があります(健康保険法第37条第1項ただし書き)。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

この期限を過ぎると、原則として任意継続は選べなくなります。
退職後は、国民健康保険への加入や、ご家族の扶養に入るなどの選択肢を検討してください。

手続きの窓口を間違えると、確認に時間がかかることがあります。
ご自身の状況に合わせて、適切な相談先を選んでください。

まとめ

休職命令を受けたあとの対応について、大切なポイントを整理しました。

  • 休職期間や給与、社会保険料の支払い方法について、会社へ確認が必要です。
  • 退職して任意継続を選ぶ場合は、保険料が全額自己負担になる点に注意してください。
  • 協会けんぽの任意継続は、退職日の翌日から20日以内に申し出る必要があります。
  • 傷病手当金は、連続する3日を含み4日以上仕事に就けなかった場合に支給対象となります。
  • 支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月です。
  • 手続きにはそれぞれ期限があるため、早めの確認が要ります。ただし、制度の詳細は会社や各保険者の窓口で必ず確認してください。

制度の仕組みや手続きの進め方について、詳しく知りたい方は傷病手当金や休職の解説もあわせて参考にしてください。

この記事の根拠(本文内33か所・台帳12項目・一次資料9件)

制度の数値(台帳から出しています)

一次資料

数値は一次情報で確かめてから台帳に入れています(情報源について)。リンク先の内容が変わっているのを見つけたら訂正の受付までお知らせください。

この記事の編集責任者

JPSM INTERNET SERVICE 代表

小笠原 治輝おがさわら はるき

休職から退職までの手続きを自分で経験しました。傷病手当金の申請、雇用保険の受給期間延長、健康保険と年金の切り替えを実際に進めた経験があります。記事は、厚生労働省・e-Gov法令検索・ハローワークの一次情報と突き合わせて確認しています。