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退職金の離婚による財産分与と計算の仕組み

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退職金の離婚による財産分与は、婚姻期間中に支払われることが確定している分が対象になります

離婚に伴う財産分与において、退職金は重要な資産の一つです。配偶者として退職金の権利を分ける対象になるかどうかは、退職のタイミングや婚姻期間によって決まります。この記事では、退職金の計算方法や分与の条件について解説します。

  • 婚姻期間中に支払われることが確定している退職金は、原則として財産分与の対象になります
  • 退職後に支払われる予定の退職金であっても、婚姻期間に対応する部分は対象に含まれることがあります
  • 退職金の額は、会社の規定や退職の理由によって大きく変わります

最終更新: / 出典: 厚生労働省

退職金の財産分与で受け取れる金額の計算方法

離婚に伴う財産分与において、退職金は「将来支払われる予定の額」を対象に計算することがあります。原則として、基準日の退職金額のうち婚姻後の同居期間に対応する分が、分与の対象となるためです。

計算の基本は、婚姻期間に対応する退職金額を算出し、その額を夫婦で分け合う形になります。分与の割合は、原則として2分の1です。

学歴と退職理由別の退職給付額の平均
学歴 職種 退職理由 平均額
大学・大学院卒 管理・事務・技術職 会社都合 17,380,000円
大学・大学院卒 管理・事務・技術職 早期優遇 22,660,000円
高校卒 管理・事務・技術職 定年 16,820,000円
高校卒 管理・事務・技術職 会社都合 13,850,000円
高校卒 管理・事務・技術職 自己都合 12,800,000円
高校卒 管理・事務・技術職 早期優遇 24,320,000円
高校卒 現業職 定年 11,830,000円
高校卒 現業職 会社都合 7,370,000円
高校卒 現業職 自己都合 9,210,000円
高校卒 現業職 早期優遇 21,460,000円

(もとにした一次情報:令和5年就労条件総合調査 結果の概況、厚生労働省)

学歴や退職の理由によって、退職給付額の平均には差が見られます。

早期優遇(青緑)がどの学歴でも最高定年大学卒1,896万円高卒・事務1,682万円高卒・現業1,183万円会社の都合大学卒1,738万円高卒・事務1,385万円高卒・現業737万円自分の都合大学卒1,441万円高卒・事務1,280万円高卒・現業921万円早期優遇大学卒2,266万円高卒・事務2,432万円高卒・現業2,146万円
学歴と辞め方で違う退職給付額の平均制度の適用時点:令和5年調査(令和4年1年間)/確認日:2026-07-26/出典:厚生労働省

図から、学歴や退職の形態によって平均額が異なることがわかります。

具体的な計算例を挙げます。婚姻期間中に支払われる予定の退職金が、例えば 12,800,000円 だったとします。

この金額を財産分与の対象とする場合、相手方が受け取れる金額の目安は、12,800,000円 の2分の1です。

ただし、実際の金額は、勤務先の規定や勤続年数、退職の理由によって変わります。事前の確認が要ります。

退職金の額は、以下の条件によって変動する可能性があります。

  • 退職理由による違い:自己都合か会社都合かによって、支給額が大きく変わる場合があります。
  • 制度の有無:企業によって退職金制度の有無は異なります。制度がない場合は分与の対象になりません。
  • 支払形態の違い:一時金として受け取るか、年金形式で受け取るかによっても計算が変わります。
  • 勤続年数による差:勤続年数が長いほど、支給される金額の目安は高くなる傾向にあります。

退職金の額を正確に把握するには、勤務先の就業規則や退職金規程を確認することが重要です。また、退職金制度がある企業の割合は、従業員数によっても異なります。

例えば、従業員1,000人以上の企業では 90.1% の割合で制度が存在しますが、30〜99人の規模では 70.1% となります。

いま、勤務先の退職金規程を確認して分与の対象を調べたい状況だとします。どちらをしたいですか。

当てはまらない方法を選ぶ必要はありません。いまの自分に近いほうを選んでください。

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計算式に使われる言葉の意味

財産分与の計算を進める際、退職金の額を算出するための言葉に戸惑うことがあります。計算の根拠となる言葉の意味を整理しておきましょう。

退職金制度の有無と根拠

退職金は法律で支払いが義務付けられたものではありません。勤務先の就業規則や退職金規程(退職金の支払いルールを定めた社内規定)の定めに従って支払われます。

そのため、そもそも退職金制度があるかどうかは、勤務先の規模によって状況が異なります。厚生労働省の調査による、退職給付制度(退職時に支払われる一時金や年金などの制度)がある企業の割合は以下の通りです。

退職給付制度がある企業の割合(令和5年)
企業の規模(従業員数) 制度がある割合
全体 74.9%
1,000人以上 90.1%
300〜999人 88.8%
100〜299人 84.7%
30〜99人 70.1%

(もとにした一次情報:令和5年就労条件総合調査 結果の概況、厚生労働省)

表から、従業員の数が多い企業ほど、退職給付制度が整っている傾向が見て取れます。ただし、中小規模の企業では制度がないケースも存在します。

参考:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

計算の基礎となる項目

退職金の額を計算する際には、勤続年数や退職時の給与額などが用いられます。これらは、勤務先の計算式によって定義が異なります。

具体的には、基本給や役職手当などの「算定基礎額」に、勤続年数に応じた「支給率」を掛けて算出する仕組みが一般的です。ただし、企業によって計算の仕組みは異なります。

例えば、退職金が「確定給付企業年金(DB)」や「確定拠出年金(DC)」といった年金形式をとる場合、一時金とは異なる考え方が必要になることがあります。

また、退職金の一部が「賞与」や「特別手当」として扱われるケースも存在します。

さらに、以下のようなケースでは、一般的な計算式とは異なる確認が必要になる場合があります。

  • 退職金が分割で支払われる場合:一括ではなく、数年にわたって支払われることがあります。
  • 中途採用の場合:勤続年数のカウント方法が、入社時ではなく試用期間終了後からとなる場合があります。
  • 役職による違い:役職手当が算定基礎額に含まれるか、あるいは除外されるかは規程によります。
  • 退職理由による差:自己都合か会社都合かによって、支給される金額の計算式が変わる場合があります。

財産分与の対象となる金額を正確に把握するためには、勤務先の規定を確認し、どのような項目が計算の基礎となっているかを整理することが重要です。

不明な点は、勤務先の総務部や人事部などの窓口へ問い合わせて確認しましょう。

退職金の額が変わる条件と分与の対象外となるケース

退職金の額は、退職の理由によって変動する場合があります。退職金の計算ルールは会社ごとに異なりますが、退職の理由が「自己都合」か「定年」かによって、受け取れる金額に差が出るケースが見られます。

厚生労働省の調査(令和5年)によると、大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者における退職給付額の平均は、以下の通りです。

退職給付額の平均(令和5年)
退職の区分 平均額
定年 18,960,000円
自己都合 14,410,000円

(もとにした一次情報:令和5年就労条件総合調査 結果の概況、厚生労働省)

参考:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

このように、退職の理由によって金額が異なる場合、財産分与の対象となる金額の算定にも影響します。分与の対象となる額を検討する際は、退職理由による違いを考慮する必要があります。

また、退職金がすべて財産分与の対象になるわけではありません。原則として、婚姻期間中に支払われることが確定している分が対象となりますが、以下のようなケースでは対象外となることがあります。

  • 婚姻期間よりも前に、すでに受給を終えている場合
  • 退職金のうち、婚姻期間に対応しない部分である場合
  • 婚姻期間中に形成されたものではなく、特有財産に当たる場合
  • 特定の条件を満たさないと支払われない性質のものである場合

例えば、婚姻期間中にすでに受給を終えた退職金や、将来の退職が見込まれないほど勤続年数が短い場合などは、分与の対象から外れる可能性があります。ただし、個別の事情により判断が分かれることもあります。

分与の対象となる範囲については、勤務先の就業規則や退職金規程、退職の時期によって判断が分かれます。具体的な金額の算出については、勤務先の規定を確認した上で、事前の検討が必要です。

なお、退職金の性質によっては、分割して支払うことが難しいケースもあります。例えば、一括支給が原則の制度や、受給資格に厳格な制限がある場合です。

受給権が確定していない段階では、分与の対象に含めるかどうかの判断が難しくなります。

まずは勤務先の担当部署へ、規程の詳細を確認することをおすすめします。具体的には、人事部や総務部などの窓口で、退職金の算出根拠や支給条件、受給資格の有無について問い合わせてみましょう。

退職金が振り込まれる時期と受け取りの手順

在職中に退職金を受け取る場合

退職金が振り込まれる時期は、勤務先の規定によります。退職後、数日から数か月程度の期間を経て振り込まれるケースが見られます。ただし、会社の決算時期や事務手続きの状況により前後する場合があります。

受け取りの手順は、会社から提示される書類の確認から始まります。退職金規程に基づき、振込先口座の指定や申請書への記入が必要です。手続きに不備があると、支払いが遅れる可能性があるため注意してください。

支払われる金額からは、所得税などが差し引かれます。手元に振り込まれる金額は、計算された退職所得から税金を引いた後の金額です。源泉徴収票の内容は、確定申告の際にも必要となる場合があります。

なお、退職金制度の有無は企業の規模によって異なります。従業員1,000人以上の企業では 90.1% の割合で制度が存在します。

参考:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

退職前に財産分与として受け取る場合

離婚に伴い、退職金を財産分与として受け取る場合は、受け取りの時期が異なります。退職金そのものを分割して受け取るのではなく、現金を分与する形が一般的です。

これは、勤務先が退職金の中間払い等に対応していない場合が多いからです。

退職金が実際に支払われるのは、将来の退職時となります。そのため、離婚の時点では、将来の退職金のうち婚姻期間に対応する分を、現金の分与として処理します。

この際、分与額の算定根拠を明確にしておくことが重要です。

もし、退職金そのものを直接分与する形をとる場合は、勤務先の規定を確認してください。会社によっては、第三者への直接の支払いに対応していない場合があるためです。

規程で禁止されている場合は、現金での解決を検討します。

分与の手続きにおいて、支払いのタイミングや方法に迷うことがあります。例えば、将来の退職時に支払われる予定の金額を、あらかじめ合意した割合で現金として受け取る方法があります。

このとき、支払いの期限も決めておくとスムーズです。

ただし、退職金が確定していない段階での分与には注意が必要です。将来の退職額が想定と異なる可能性があるため、公正証書などの作成が重要となります。

将来の変動リスクを考慮し、清算条項なども含めて検討してください。

なお、退職金に関する法的な交渉が必要な場合は、弁護士へ相談してください。ここでは扱えません(弁護士法72条)。

具体的な手続きや、個別の事情に応じた対応については、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

退職金の財産分与に関するよくある勘違い

退職金はまだもらっていないので、財産分与の対象にはなりませんか?

いいえ、対象になる可能性があります。将来支払われる予定であっても、原則として基準日の退職金額のうち婚姻後の同居期間に対応する分は、分与対象となるためです。

退職金そのものを、直接相手の口座に振り込んでもらうことはできますか?

勤務先の退職金規程によります。会社によっては、第三者への直接支払いに対応していない場合があるため、事前の確認が必要です。

退職金から引かれる税金は、財産分与の計算には関係ありませんか?

関係します。退職所得控除などを差し引いた後の、実際に受け取れる金額を基準にするのが一般的です。ただし、計算方法には細かな違いが生じる場合があります。

退職金の額を巡って会社と交渉して、分与額を増やしてもらうことはできますか?

できません。退職金の支払額は、あくまで勤務先の規定に基づいて決定されるものです。会社に対して分与額の交渉を行う権限は、個人にはありません。

退職金制度がない会社の場合、分与の対象にはなりませんか?

退職金制度がない場合は、当然ながら分与の対象にはなりません。退職金制度がある企業の割合は、従業員数によって異なります。

従業員1,000人以上の企業では 90.1% ですが、30〜99人の企業では 70.1% となります。

参考:令和5年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省

分与の対象となる退職金の範囲に例外はありますか?

原則として婚姻期間に対応する分が対象ですが、例外もあります。例えば、結婚前に積み立てた分や、特有財産として認められるものは対象外となる場合があります。

ただし、婚姻後に退職金制度への加入や拠出が行われた場合は、その期間分が共有財産に含まれるのが一般的です。具体的な判断は、個別の事情によります。

退職金の支払い方法によって、分与の手続きは変わりますか?

はい、変わります。一時金として受け取る場合と、年金形式で受け取る場合では、分与の計算や時期が異なります。年金形式の場合は、将来の受給額を予測して計算します。

また、会社が退職金を直接分与することを認めないケースもあります。その際は、一方が退職金を受け取った後に、もう一方へ現金を支払う方法がとられます。

まとめ

離婚に伴う財産分与における退職金の扱いは、以下の点に整理されます。

  • 将来支払われる予定であっても、婚姻期間に対応する分が対象になることがあります。
  • 分与の対象額は、税金の影響を考慮した、実際に受け取れる金額を基準にするのが一般的です。
  • 退職金の支払いは、勤務先の退職金規程(退職金の支払いルールを定めた社内規定)に従います。
  • 退職金の有無は、勤務先の制度によって異なります。

退職金制度がある企業の割合は、従業員数によって異なりますが、1,000人以上の企業では 90.1% に達しています。ただし、制度の有無は各社の規定により決まるため、事前の確認が必要です。

具体的な計算や手続きについては、退職金の解説ページ退職金シミュレーションも参考にしてください。

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この記事の編集責任者

JPSM INTERNET SERVICE 代表

小笠原 治輝おがさわら はるき

休職から退職までの手続きを自分で経験しました。傷病手当金の申請、雇用保険の受給期間延長、健康保険と年金の切り替えを実際に進めた経験があります。記事は、厚生労働省・e-Gov法令検索・ハローワークの一次情報と突き合わせて確認しています。