傷病手当金と失業保険のどちらが得か、受給条件を比較

傷病手当金と失業保険のどちらが得かは、現在の体調と離職の状況によります

病気やケガで働けない期間の生活を支える制度には、傷病手当金と失業保険(基本手当)があります。会社に在籍したまま休むのか、退職した後に受給するのかによって、選べる制度や条件が大きく異なります。この記事では、それぞれの受給に関するルールを整理して解説します。

  • 傷病手当金は、健康保険の被保険者が病気やケガで働けないときに支給されます
  • 失業保険は、離職して失業状態にあるときに支給されます
  • どちらが適しているかは、働ける状態にあるかどうかが判断の分かれ目になります

最終更新: / 出典: 全国健康保険協会

傷病手当金と失業保険を検討する際の手順

傷病手当金と失業保険は、どちらも生活を支える仕組みですが、受給の要件や目的が異なります。どちらを利用すべきかは、現在の体調や退職の理由によって分かれます。

以下の5つの工程で、ご自身の状況を確認してください。ただし、傷病手当金は「働けない状態」であることが前提となります。

  1. 現在の健康状態を確認する
  2. 会社に休職制度や傷病手当金の申請ができるか相談する
  3. 退職後の生活費や、受給できる金額の目安を計算する
  4. 退職のタイミングや、失業保険の受給開始時期を検討する
  5. 管轄のハローワークや健康保険組合へ手続きを行う

失業保険の基本手当(雇用保険から支給される給付金)の金額は、退職前の賃金によって決まります。

以下の表は、賃金日額と、基本手当日額の関係を示しています。受給額の目安として活用してください。

賃金日額と基本手当日額の目安
区分 賃金日額 基本手当日額
29歳以下 14,900円 7,450円
29歳以下 3,203円 2,562円
30〜44歳 16,540円 8,270円
30〜44歳 3,203円 2,562円
45〜59歳 18,220円 9,110円
45〜59歳 3,203円 2,562円
60〜64歳 17,400円 7,830円
60〜64歳 3,203円 2,562円
全年齢 3,203円 2,562円

参考:雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ|厚生労働省

失業保険の受給には、離職票を提出して求職を申し込み、受給資格決定を受けた日から失業状態にあった通算7日の「待期期間」があります。

この期間中に、病気やケガで働けない状態が続いている場合は、傷病手当金の対象になることがあります。ただし、同じ期間について両方の制度を重複して受給することはできません。

給料が高いほど、もらえる割合は下がる1日にもらえる額8,270円2,562円16,540円賃金日額→もし割合が下がらなければ実際の額ここから下がる上限は30〜44歳16,540円から上は増えません
賃金日額から基本手当日額が決まるまで制度の適用時点:令和8年8月1日/確認日:2026-08-10/出典:厚生労働省

図は、賃金日額の高さによって基本手当日額がどのように決まるかの仕組みを示しています。

受給の判断には、雇用保険の加入期間や離職理由が関わります。自己都合退職の場合、原則として1か月の給付制限が発生します。

また、直前5年間に正当な理由のない自己都合退職が2回以上ある場合は、3か月となるため注意が必要です。

傷病手当金については、退職日までに続けて1年以上の被保険者期間が必要です。ただし、資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態である必要があります。

傷病手当金の支給額は、原則として支給開始日前12か月間の標準報酬月額の平均を30で割った額に3分の2を掛けて算出します。支給期間は、開始日から通算して1年6か月です。

失業保険の受給期間は、離職日の翌日から原則として1年です。ただし、妊娠や出産などの理由で引き続き4年を上限として延長できる場合があります。

再就職手当の受給には、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上であることなどの要件があります。ただし、これ以外にも待期満了後の就職であることなど、所定の支給要件をすべて満たす必要があります。

手続きを忘れないための期限一覧

傷病手当金と基本手当では、手続きのタイミングや、お金が振り込まれるまでの流れが異なります。それぞれの制度で、確認が必要なポイントをまとめました。

制度ごとの手続きと振込の目安
制度名 確認すべき事項 目安
傷病手当金 申請書の提出 医師の証明が必要
基本手当 認定日の振込 5営業日

厚生労働省「雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ」を参考に作成

基本手当の振込時期は、ハローワークでの認定日から数えて5営業日程度となります。ただし、休祝日や年末年始を含む場合は、通常より振込が遅れることがあります。

基本手当は、原則として離職日の翌日から1年の受給期間内に受給を終える必要があります。この期間を過ぎると、所定給付日数が残っていても支給されません。

妊娠・出産・育児などの理由で30日以上働けない場合は、受給期間を延長できる場合があります。延長は自動ではないため、公共職業安定所長へ申し出る手続きが必要です。ただし、延長したあとの受給期間は、最長で 4年 です。

一方、傷病手当金は、業務外の病気やケガで労務不能となり、連続する3日を含み4日以上休み、給与を受けられない場合に支給対象となります。この待期期間には、土日祝などの公休日や有給休暇も含まれます。

傷病手当金の支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月です。退職後に継続して受給するには、退職日までに続けて1年以上の被保険者期間が必要です。

ただし、退職時に傷病手当金を受けているか受けられる状態であり、退職後も同一傷病による労務不能が継続する必要があります。

また、基本手当の計算において、時給や日給などの形態によっては、70%の保障に関する規定が関わる場合があります。詳細な条件は、管轄のハローワークで確認してください。

基本手当の受給には、ハローワークでの「失業の認定」が必要です。通常は4週間の間隔で認定を受け、その都度、就職活動の状況などを報告します。

なお、自己都合による離職の場合、原則として1か月の給付制限期間が発生します。ただし、離職理由や過去の離職歴によっては、制限が3か月となる場合もあります。

再就職手当の受給を検討している方は、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あることが条件の一つです。これに加え、安定した職業への就職など、公共職業安定所長が認める要件を満たす必要があります。

参考:雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ|厚生労働省


参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

傷病手当金の待期期間と失業保険の受給条件

傷病手当金を受け取るには、連続して3日を含む、4日以上仕事に就けなかったことが要件となります。
この期間には、土日祝などの公休日や有給休暇も含まれます。

一方、基本手当(失業保険)の受給には、離職理由による制限が関わります。
離職理由によって、給付が始まるまでの待ち時間が変わるため注意が必要です。

会社の都合なら、待つのは7日だけ待期7日会社都合基本手当が出る自己都合1か月基本手当が出るくり返し3か月茶色は出ない期間、青緑は出る期目もりは実際の日数どおりですそのあと認定日5営業日4週間後
退職の理由でどれだけ待つかが変わる制度の適用時点:令和8年8月1日/確認日:2026-08-10/出典:厚生労働省

図の通り、退職の理由によって、給付制限の有無や期間が異なります。

基本手当の受給には、離職理由にかかわらず共通の待期期間として7日が設けられています。

自己都合で退職した場合は、原則として1か月の給付制限があります。
ただし、退職前5年間に、正当な理由のない自己都合退職が2回以上ある場合は、3か月となります。

傷病手当金の支給額は、標準報酬月額の平均を30で割った額に、3分の2を掛けて計算します。

傷病手当金の支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。

退職後に傷病手当金の継続給付を受けるには、条件があります。
資格喪失の日の前日までに、1年以上続けて被保険者である必要があります。

また、資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であることも要件です。

基本手当の受給期間は、離職日の翌日から原則として1年です。
ただし、妊娠や出産などの理由で30日以上職業に就けないときは、期間を延長できます。

受給期間に加えられる期間の上限は4年です。
延長の手続きは自動ではないため、公共職業安定所長に申し出る必要があります。

再就職手当を受け取るための条件の一つに、支給残日数の規定があります。
基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あることが求められます。

これ以外にも、安定した職業に就いたことなど、要件を満たす必要があります。

制度の利用に関する状況別の整理
いまの立場 扱い 次に見るところ
正社員 3分の2の支給対象 傷病手当金の詳細
契約社員 3分の2の支給対象 傷病手当金の詳細
パート・アルバイト 3分の2の支給対象 傷病手当金の詳細
休職中で在籍している人 1年6か月の支給対象 傷病手当金の詳細
退職して任意継続を選んだ人 1年の確認が必要 健康保険の継続
退職して国民健康保険に入った人 1年の確認が必要 国民健康保険の加入
家族の扶養に入った人 1年の確認が必要 扶養の条件
産前産後・育児休業の人 4年までの延長が可能 雇用保険の延長

全国健康保険協会(2026-08-23確認)

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

手続きがうまくいかないときの相談先

制度の利用に関する判断や、手続きの進め方で迷う場面はあります。ご自身の状況に合わせて、適切な窓口へ確認してください。

健康保険の給付について相談したい場合

傷病手当金の申請書類に医師の記入が足りない、あるいは支給額の計算に疑問があるときは、加入している健康保険組合や協会けんぽへ相談してください。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

会社が窓口となる場合もありますが、最終的な支給可否の判断は保険者が行います。ただし、会社を通じて確認が必要な事項もあるため、まずは社内の担当部署へ相談しましょう。

支給額の計算において、被保険者期間が12か月未満の場合などは、以下の数値が基準として関わることがあります。

  • 標準報酬月額の平均額が 320,000円の場合
  • 支給開始日が令和7年4月1日以降である場合

保険者によって、書類の不備や審査の進捗に関する回答が異なるため、事前の確認が要ります。また、退職後の継続給付については、資格喪失の日の前日までに 1年以上の被保険者期間が必要です。

ただし、継続給付を受けるには、資格喪失日の前日に現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であることも条件となります。

雇用保険の給付について相談したい場合

基本手当の受給に関する手続きや、失業の認定について困ったときは、管轄のハローワークへ相談してください。失業の認定は、原則として 4週間ごとに受ける仕組みです。

参考:ハローワークインターネットサービス|雇用保険の具体的な手続き|厚生労働省

ハローワークでは、以下の点について確認できます。

  • 失業の認定に関する具体的な手続き
  • 受給にあたっての要件の確認

離職理由や就職活動の実績によって、受給できる条件が変わることがあります。例えば、自己都合退職の場合、原則として 1か月の給付制限がかかる場合があります。

ただし、正当な理由がある場合や、特定の教育訓練を受ける場合などは、給付制限が解除されるケースもあります。詳細は窓口で確認してください。

参考:令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます|厚生労働省

また、受給期間は離職日の翌日から原則 1年ですが、妊娠や出産などの理由で働けないときは、最長 4年まで延長できる仕組みがあります。延長は自動ではないため、公共職業安定所長への申し出が必要です。

参考:雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ[PDF]|厚生労働省

なお、再就職手当の受給を検討している場合は、基本手当の支給残日数が 3分の1以上あることが要件の一つとなります。ただし、これ以外にも安定した職業への就職など、別途条件を満たす必要があります。

傷病手当金と失業保険に関するよくある勘違い

基本手当は、働けない期間に支給される手当ですか?

いいえ、基本手当は働く意思と能力があるものの、仕事に就けない「失業状態」が条件です。病気やケガで働けない場合は対象になりません。

参考:雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ[PDF]|厚生労働省

離職理由によって、待期期間の長さは変わりますか?

いいえ、待期期間は離職理由にかかわらず共通で 7日 間です。条件が変わるのは待期期間ではなく、給付制限の有無などです。

ハローワークへの登録や求人情報の閲覧だけで、求職活動実績になりますか?

いいえ、登録や閲覧だけでは実績になりません。求人への応募や、許可を受けた職業紹介事業者による職業相談などが対象となります。

職業訓練の申し込みに伴う相談は、求職活動実績になりますか?

申し込みに伴い職業相談をした場合は、実績になり得ます。訓練の受講開始まで進むことは必須ではありません。ただし、受講が実績として認められるかは管轄のハローワークへ確認してください。

自己都合で退職した後に、すぐに基本手当を受け取れますか?

自己都合による離職の場合、原則として 1か月 の給付制限期間があります。ただし、令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合などは、制限が解除されるケースもあります。

参考:令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます|厚生労働省

再就職手当は、早く就職すれば必ずもらえますか?

いいえ、必ずもらえるわけではありません。基本手当の支給残日数が 3分の1以上であること等の要件があります。また、過去の受給状況により支給されない場合もあります。

失業保険の受給期間には期限がありますか?

はい、原則として離職日の翌日から 1年 です。ただし、妊娠や出産などで働けない場合は、最長 4年 まで延長できる仕組みがあります。

参考:雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ[PDF]|厚生労働省

傷病手当金と失業保険は金額面でどちらが得か

結論として、金額だけで一律に「こちらが得」とは決められません。傷病手当金は病気やケガで働けない人の生活保障、失業保険の基本手当は働く意思と能力があり、求職中の人への給付です。現在働ける状態かどうかによって対象制度が決まるため、両方の受給条件を満たしたうえで有利な方を自由に選ぶ仕組みではありません。

傷病手当金の日額は、原則として支給開始前の標準報酬月額の平均を日額に換算し、3分の2を掛けて計算します。支給期間は通算1年6か月で、労務不能が長引く場合に生活費を継続的に補えることが利点です。休業中に給与が支払われる場合は、傷病手当金との差額のみが支給されることがあります。

参考:傷病手当金|全国健康保険協会

基本手当の日額は、原則として離職前の賃金から算出する賃金日額に、賃金水準や年齢に応じた給付率を掛けて決まります。令和8年8月以降の日額は、下限が2,562円、上限が年齢区分により7,450円から9,110円までです。ただし、受給総額は離職理由、年齢、雇用保険の加入期間に応じた所定給付日数にも左右されます。

参考:雇用保険関係 パンフレット・様式|愛知労働局

比較するときは、傷病手当金の見込日額と支給対象日数、基本手当の見込日額と所定給付日数をそれぞれ掛けて総額を試算します。ただし、療養中で就職できない間は基本手当の対象にならないため、療養中に受給期間延長を申請し、回復後に求職と基本手当の受給手続きを始める方法も検討できます。したがって、「得かどうか」は日額だけでなく、体調、受給可能期間、給付開始までの期間を含めて判断することが重要です。

まとめ

傷病手当金と失業保険(基本手当)は、どちらも生活を支える重要な制度ですが、受給の要件が大きく異なります。

業務外の病気やケガで働けず、ほかの支給要件も満たす場合は、健康保険の傷病手当金が検討対象となります。支給開始から通算して1年6か月の間、標準報酬日額の3分の2が支給される仕組みです。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

一方で、働く意思と能力がある失業状態であれば、雇用保険の基本手当が対象です。ただし、自己都合による離職の場合、原則として1か月の給付制限期間が発生します。

参考:雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ[PDF]|厚生労働省

どちらの制度を利用できるかは、現在の体調や退職の理由によって分かれます。具体的な手続きや判断については、加入している健康保険組合や、管轄のハローワークへ相談してください。

制度のルールは改正されることがあるため、必ず最新の情報を確認してください。

この記事の根拠(本文内83か所・台帳24項目・一次資料6件)

制度の数値(台帳から出しています)

一次資料

数値は一次情報で確かめてから台帳に入れています(情報源について)。リンク先の内容が変わっているのを見つけたら訂正の受付までお知らせください。

この記事の編集責任者

JPSM INTERNET SERVICE 代表

小笠原 治輝おがさわら はるき

休職から退職までの手続きを自分で経験しました。傷病手当金の申請、雇用保険の受給期間延長、健康保険と年金の切り替えを実際に進めた経験があります。記事は、厚生労働省・e-Gov法令検索・ハローワークの一次情報と突き合わせて確認しています。