休職したら終わり?生活を守るための制度と手順

休職したら終わりと感じる方へ。生活を守るための制度と手順

休職によって給与が止まると、生活への不安が強くなります。この記事では、病気で働けない期間の生活を支える傷病手当金や、退職後の健康保険を維持する任意継続被保険者制度について、手続きの期限や条件をまとめています。

  • 傷病手当金は、連続して3日間の待期期間を経て支給されます
  • 退職後の任意継続は、退職日の翌日から20日以内に申し込む必要があります
  • 休職中も健康保険の資格は継続するため、保険料の負担は発生します

最終更新: / 出典: 全国健康保険協会(協会けんぽ)

休職中や退職後に直面する経済的な不安は、制度を正しく理解することで軽減できる場合があります。
まずは、給与の代わりとなる手当や、健康保険を維持する方法を確認しましょう。

ただし、すべての人が一律に同じ条件で制度を利用できるわけではありません。
受給できる金額や継続できる期間には、個々の状況に応じた条件が設定されています。

例えば、傷病手当金は3日の待期期間を過ぎる必要があります。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

また、任意継続制度を利用する場合も、退職後の手続きには期限があります。

参考:任意継続被保険者制度|全国健康保険協会(協会けんぽ)

休職から生活を立て直すまでの5つの工程

体調を崩して仕事を休むときは、生活の基盤を維持するための手順があります。
まずは現在の状況を整理して、次に進むべき方向を確認しましょう。

生活を立て直すための工程は、次の5つの段階に分けられます。

  1. 医師の診断を受け、休職の必要性を確認する
  2. 傷病手当金(病気やケガで働けない期間に支給される手当)の申請準備をする
  3. 社会保険の負担方法を会社と相談する
  4. 退職を選択する場合は、健康保険の継続方法を検討する
  5. 再就職に向けて、雇用保険などの制度を確認する

最初の工程では、医師の意見をもとに、現在の状態で働けるかを判断します。
診断書をもらうことで、会社への休職届の提出が可能になります。

次に、傷病手当金の受給について考えます。
この手当は、連続して3日間の待期を終えたあとに、支給の対象となる場合があります。

傷病手当金は、健康保険の被保険者が対象です。
受給要件を満たせば、休職中の収入を支える仕組みとして活用できます。
ただし、支給される額は標準報酬月額の平均の3分の2程度です。

支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月です。
ただし、退職後に受給を継続するには、資格喪失日の前日までに1年以上の被保険者期間があり、同日に受給中か受給要件を満たしている必要があります。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

もし退職を決めた場合は、健康保険の切り替えが必要です。
任意継続を選ぶか、国民健康保険に加入するかを検討します。
任意継続を希望する場合、退職日の翌日から20日以内に申し出る必要があります。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

任意継続の保険料は、全額自己負担となります。
例えば東京都の場合、令和8年度の保険料率は10.08%です。
ただし、退職時の標準報酬月額が320,000円を超える場合は、この額が上限となります。

参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)の任意継続被保険者の方の保険料額(令和8年4月分〜・東京支部)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

任意継続ができる期間は、原則として2年です。
ただし、他の健康保険に加入した場合や、保険料を滞納したときなどは、途中で資格を失います。

最後に、次の仕事を探す準備をします。
雇用保険の受給については、管轄のハローワークで確認が必要です。
ただし、自己都合による退職の場合は、原則として1か月の給付制限が発生することがあります。

参考:雇用保険の具体的な手続き|厚生労働省

なお、一定の条件を満たす教育訓練を受ける場合などは、給付制限が解除されるケースもあります。
受給のタイミングや条件については、必ず事前にハローワークへ相談してください。

参考:令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます|厚生労働省

手続きを忘れないための期限一覧

休職や退職に伴う手続きには、それぞれ期限があります。期限を過ぎると、希望する制度を利用できなくなる可能性があるため、あらかじめ目安を確認しておきましょう。

主な手続きの期限目安
手続きの内容 期限の目安 備考
任意継続への加入 退職日の翌日から20日以内 健康保険法に基づきます
傷病手当金の支給 支給要件を満たしている期間 通算で1年6か月まで
雇用保険の手続き 退職後、速やかに 管轄のハローワークで確認が必要です

任意継続の手続きには、退職後の早い段階での判断が求められます。加入の申込みには期限があるため、事前の確認が要ります。

参考:任意継続被保険者制度|全国健康保険協会(協会けんぽ)

任意継続の申出期限は、退職日の翌日から20日以内です。郵送の場合は、この期間内に書類が必着している必要があります。ただし、20日目が土日・祝日の場合は、翌営業日まで認められます。

任意継続ができる期間は、原則として2年です。ただし、他の健康保険の被保険者になった場合や、保険料を期限までに納めなかった場合などは、途中で資格を失います。

傷病手当金については、支給を受けられる通算期間が決まっています。支給を開始した日から通算して1年6か月が目安です。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

退職後も継続して受給するには、資格喪失日の前日までに1年以上、継続して被保険者であるなどの要件を満たす必要があります。ただし、この期間には国民健康保険の加入期間などは含まれません。

雇用保険の受給に関する具体的な手続きは、お住まいの地域を管轄するハローワークへ相談してください。受給できる時期や条件は、個別の状況によって異なります。

参考:雇用保険の具体的な手続き|厚生労働省

自己都合による退職の場合、基本手当の受給には原則として1か月の給付制限がかかります。ただし、教育訓練等を受ける場合など、一定の条件を満たせば制限が解除されるケースもあります。

参考:令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます|厚生労働省

傷病手当金の受給には、待期期間も関係します。連続して3日間の休みが必要です。この待期期間には、土日・祝日や有給休暇も含まれます。

支給額は、標準報酬月額の平均を30で割った額に、3分の2を掛けて算出します。ただし、被保険者期間が12か月未満の場合、本人の標準報酬月額の平均と320,000円のいずれか低い額を用います。

任意継続の保険料を検討する際は、上限額にも注意しましょう。標準報酬月額は、資格喪失時の額と320,000円の低いほうになります。これにより、退職後の方が保険料が安くなるケースもあります。

また、都道府県によって健康保険料率は異なります。例えば、東京都の令和8年度の料率は9.85%です。これに0.23%が加わります。なお、全国で最も低いのは9.21%、最も高いのは10.55%です。

退職後の保険料を抑えるための上限額

退職後に任意継続を選ぶ場合、支払う保険料は退職時の給与水準によって決まります。

ただし、給与が高かった人には、保険料の負担を抑えるための仕組みが用意されています。

退職時の給与が標準的な範囲の人

退職時の標準報酬月額(社会保険料を計算する際の基準となる月額)が、一定の範囲内にある場合です。

この場合は、退職時の給与に基づいた保険料がそのまま適用されます。

会社に在籍していたときと同様の計算方法で、保険料が決まります。

退職時の給与が非常に高い範囲の人

退職時の標準報酬月額が、あらかじめ定められた上限額を超えている場合です。

健康保険法第47条第1項の規定により、任意継続被保険者の標準報酬月額には上限があります。

令和8年度における、協会けんぽの標準報酬月額の上限は 320,000円 です。

参考:【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について|全国健康保険協会(協会けんぽ)

退職時の標準報酬月額がこの数値を超える人は、この上限で頭打ちになります。

そのため、退職後のほうが健康保険料が安くなることがあります。

なお、この上限額は毎年度見直されるため、事前の確認が要ります。

保険料の計算に関する注意点

任意継続の保険料を検討する際は、以下の点にも留意してください。

まず、任意継続被保険者は保険料の全額を自己負担することになります。

会社員時代のように、事業主が半分を負担してくれることはありません。

次に、加入できる期間は原則として2年です。

ただし、他の健康保険に加入した場合や、保険料を滞納した場合は途中で資格を失います。

また、加入の申込みには期限があります。

協会けんぽの場合、退職日の翌日から20日以内に申し出る必要があります。ただし、正当な理由があると保険者が認めたときは、20日を過ぎた申し出が認められる場合があります(健康保険法第37条第1項ただし書き)。

この期限を過ぎると任意継続は選べなくなるため、退職後にいち早く確認しましょう。

最後に、お住まいの地域によって保険料率が異なる点も重要です。

例えば、東京都の令和8年度の保険料率は 10.08% です。

これは、健康保険料率に子ども・子育て支援金率を加えた数値です。

都道府県によって料率は異なるため、自身の状況に合わせた計算が必要です。

参考:任意継続(任意継続の被保険者期間・保険料・保険給付)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

詳細な保険料額については、協会けんぽの資料などで確認してください。

参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)の任意継続被保険者の方の保険料額(令和8年4月分〜・東京支部)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

傷病手当金を受け取るための待期期間

傷病手当金を受け取るには、連続して休む期間が必要です。この期間を待期期間といいます。

待期期間は、連続して 3日 必要です。この期間には、土日や祝日、有給休暇などの公休日も含まれます。

待期期間の要件を満たしたあとに、支給が始まります。支給される金額は、標準報酬月額の平均を30で割った額に 3分の2 を掛けた金額です。

支給される期間は、支給を開始した日から通算して 1年6か月 です。2022年(令和4年)1月1日からは、通算して計算する方式になっています。

休んだ3日のあと、4日目から支給されます1日目2日目3日目4日目から支給待期(3日)は支給されません。土日・祝日や有給休暇も入ります支給される期間通算1年6か月1日あたりの額標準報酬日額の3分の2
傷病手当金は、いつから・どれくらい出るか制度の適用時点:2026-07/確認日:2026-07-26/出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)

図は、支給が始まるタイミングと、受け取れる期間の目安を示しています。

待期期間の考え方
状況 待期期間の扱い 支給の開始
連続して休んだ場合 3日 を含む 待期終了の翌日から
途中で出勤した場合 連続性が途切れる 改めて待期が必要

待期期間のカウントについては、事前の確認が要ります。連続して休んでいるかどうかが、支給の判断に影響するためです。

ただし、待期期間の扱いは状況によって異なります。以下のようなケースでは、原則的なカウント方法と異なる点に注意が必要です。

1つ目は、途中で出勤した場合です。待期期間中に1日でも出勤すると、連続性が途切れてしまいます。その場合は、改めて 3日 の待期が必要となります。

2つ目は、有給休暇を使用している場合です。有給休暇は公休日と同様に扱われるため、待期期間のカウントに含めることができます。傷病手当金の待期に算入できるかは、会社の休業規定では変わりません。

3つ目は、退職後に継続して受給する場合です。退職日までに続けて 1年 以上被保険者であったなどの条件を満たせば、資格喪失後も支給が継続されます。

支給開始日や受給期間の計算については、加入している健康保険組合や協会けんぽの窓口へ確認しましょう。申請書類の作成にあたっては、医師の証明が必要となるため、主治医との連携も重要です。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

手続きがうまくいかないときの相談先

手続きを進める中で、判断に迷ったり、会社とのやり取りで困ったりすることがあります。状況によって、相談できる窓口は異なります。

会社とのやり取りや制度の利用で困っている場合

休職中の給与や、会社への書類提出について困ったときは、まずは勤務先の担当部署に相談してください。会社の規定や、手続きの進め方について確認できます。

もし、会社との間で金銭の返還や未払いなどのトラブルになり、会社が応じない場合は、労働基準監督署などの公的な機関へ相談してください。会社と交渉できるのは弁護士のみではなく、労働組合や一定のADRにおける特定社会保険労務士も可能です。

弁護士でなければ扱えない用件かどうかを仕分けるために、まずは労働局などの相談窓口を利用することをおすすめします。交渉が必要な段階では、あとから依頼し直すと費用が二重にかかることがあります。

また、傷病手当金の申請書類に不備がある場合や、支給要件を満たしているか不明なときは、加入している健康保険組合や協会けんぽへ直接問い合わせることも有効です。

医師の証明が必要なため、主治医との連携も欠かせません。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

失業保険や雇用保険の手続きについて困っている場合

退職後の雇用保険(失業手当などに関する保険)の手続きについて不明な点があるときは、管轄のハローワークへ相談してください。離職票の交付や、受給の要件について確認できます。

離職票が届かない場合などは、ハローワークから会社へ状況を確認してもらうことも可能です。手続きの詳細は、管轄のハローワークが判断します。

参考:ハローワークインターネットサービス|雇用保険の具体的な手続き | 厚生労働省|厚生労働省

なお、受給に関するルールには例外もあります。例えば、教育訓練を受けることで給付制限が解除されるケースなどです。自身の状況が該当するか、窓口で確認しましょう。

参考:令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます | 厚生労働省|厚生労働省

また、自己都合による退職の場合、原則として1か月の給付制限がかかります。ただし、特定理由離職者として認められるなど、事情によって制限が適用されない場合もあります。

受給要件の判断は、ハローワークの窓口で行われます。

休職や保険に関するよくある勘違い

休職中も社会保険料の支払いは止まりますか

いいえ、休職中も社会保険料の支払いは止まりません。
給与が発生していない期間も、会社と本人が折半して負担する仕組みは継続します。

ただし、会社が保険料を立て替えている場合は、復職時や退職時に精算が必要です。

傷病手当金を受け取っていれば、保険料は払わなくていいですか

いいえ、傷病手当金を受け取っていても、社会保険料の支払い義務は残ります。
傷病手当金は、標準報酬月額の平均の3分の2を支給するものです。

保険料の負担とは、別の仕組みとして存在します。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会(協会けんぽ)

退職して任意継続を選んだら、保険料は在籍中と同じ金額ですか

いいえ、任意継続の保険料は、原則として在籍時よりも高くなります。
会社負担分も本人が支払うため、負担額はおよそ2倍になるからです。
ただし、退職時の標準報酬月額が320,000円を超える場合は、この上限額が適用されます。

参考:【健康保険】令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について|全国健康保険協会(協会けんぽ)

退職後に失業手当をもらうには、すぐに働ける状態である必要がありますか

はい、失業手当(基本手当)の受給には、働く意思と能力があることが要件です。
病気やケガですぐに働けない状態では、基本手当を受給できません。

受給の要件については、管轄のハローワークが判断します。

参考:雇用保険の具体的な手続き|厚生労働省

まとめ

休職中の生活設計では、社会保険料の負担と各種手当の仕組みを正しく理解しておくことが重要です。これまでのポイントを整理します。

  • 休職中も社会保険の資格は継続するため、保険料の支払いは止まりません。
  • 給与がない期間も、健康保険料や厚生年金保険料の負担割合は原則として会社と本人が半分ずつです。
  • 傷病手当金は、標準報酬月額の平均を30で割った額に3分の2を掛けた金額が支給されます。ただし、支給開始日から通算して1年6か月が経過すると終了します。
  • 退職後に任意継続を選ぶ場合、保険料は全額自己負担となります。手続きは退職日の翌日から20日以内に行う必要があります。
  • 失業手当(基本手当)は、働く意思と能力があることが受給の要件です。病気などで働けない状態では、原則として受給できません。

制度の利用や手続きについて、より詳しく知りたい方は傷病手当金や休職に関する解説もあわせて確認してください。

この記事の根拠(本文内43か所・台帳14項目・一次資料9件)

制度の数値(台帳から出しています)

一次資料

数値は一次情報で確かめてから台帳に入れています(情報源について)。リンク先の内容が変わっているのを見つけたら訂正の受付までお知らせください。

この記事の編集責任者

JPSM INTERNET SERVICE 代表

小笠原 治輝おがさわら はるき

休職から退職までの手続きを自分で経験しました。傷病手当金の申請、雇用保険の受給期間延長、健康保険と年金の切り替えを実際に進めた経験があります。記事は、厚生労働省・e-Gov法令検索・ハローワークの一次情報と突き合わせて確認しています。